顔のパーツにコンプレックスがある。
顎が割れてる、隔世遺伝のせいだ。会ったこともない祖父を少し恨んでいる。

だから私は整形している。

仲の良い友達と居ても、グッと口を閉じた笑い方にしていた

親にも言っていない。夫にも言っていないし、友人にも言っていない、私だけの秘密。
もしかしたら母親は気づいているのかもしれないけど、触れてこないからわざわざ言う必要も無いと思っている。

いじめられた訳ではないけど、イジられたり、陰で言われたりというのはあった。
中学の時は特にひどかったけど、他にも容姿で言われている子が沢山居たのが心の救い。
中学生ってなんであんなに顔や体型についてとやかく言うんだろう。自分のことは棚に上げて。

彼氏もできたし、人並みに学校生活は楽しんできた。
それでもやっぱり時折顎について言われることには慣れた試しがなかった。すごく惨めだったし、悲しくてつらくて、毎日鏡を見るたびに落ち込んでいた。
ラインがくっきりしてしまう、歯を見せた笑顔が作れなくて、仲の良い友達と居てもグッと口を閉じた笑い方にしていた。

ふざけ合いながらのラリー。大口開けて笑い転げた、一番好きな時間

中学当時のテニス部の練習は上手いペアから順にコートに入っていた。私は下から2、3番目だったから、“ハーフコート”と呼ばれるコート半面くらいの場所でラリーをしていた。
ハーフコートはいつも同じメンバー。部長や上手い子がいるコートから離れた場所にあったこともあり、真面目に練習するはずもなく、いつもふざけ合いながらラリーをしていた。
その時は本当に楽しくて、大口開けて笑い転げて、1日の中で一番好きな時間だった。

部活の友達とは手紙交換を沢山していて、勉強よりも手紙を書くことに熱中し、親にすごく怒られた。無駄に思われたかもしれないけど、私はその時間は全く無駄ではなかったと思うし、いまでも思い出として深く残っている。

ハーフコートの仲間に、とても可愛くて面白くて頭の良い友達がいた。もちろんその友達とも手紙のやりとりをしていた。
その子は性格も顔も良いので、僻みからか“ぶりっ子”と言われていたけれど、本当にそれは僻みに過ぎなくて、非の打ち所がない子だった。

まさかの返事。裏表のない友達の言葉は、いまでも心に残っている

私はその友達に手紙で「M子は可愛くて良いよね!羨ましいな、私は全然可愛くないから」と何気なく、本音で書いた。
その子の返事は、
「のんちゃんも笑った時、めちゃくちゃ可愛いよ!だから自信持って!本気で笑ってるときすごく可愛い」と書いてくれた。

まさかの返事に驚いたけど、裏表のない友達の言葉はいまでも心に残っている。

でもやっぱり自然な笑った顔に自信が持てなくて、整形をした。
整形をしても、昔言われたヒドい言葉は鮮明に思い出すし、絶対に消すことはできない。

それでも、M子、笑顔が可愛いって言ってくれてありがとう。
毎日鏡の前で口を結んで笑う練習をしていたけど、M子の手紙を読んで、その習慣はやめたよ。M子の前では自然な笑い方でいて良いんだと思ったから。