昨年我慢していたことが全て実現するはずだった2021年夏。そんな期待も虚しく、オリンピックとパラリンピック以外は去年と差ほど変化のないまま終わろうとしている。
20代後半、それは金銭的ゆとりや仕事での活動スタイルが徐々にでき、どこで息を抜くのか分かる頃。夏は息抜きにはもってこいの時間になるはずなのに……。
カメラロールには、半分ヤケクソで抜いた親知らず抜歯の写真しかない。状況が状況だからしょうがないと言えども、これでいいのか? 抜歯によるアンパンマンの擬似体験だけで??
美容院で、ノーベル平和賞受賞者のマララさんの記事を読んで心打たれた
そんなもやもやしていたある日、4ヶ月ぶりの美容院で読んだ雑誌の特集に心打たれた。かの有名なノーベル平和賞受賞者のマララさんの記事だ。オックスフォード大学を卒業した今の赤裸々なインタビューだった。
なんと、数々の偉業を成し遂げ、全世界が注目する若手リーダーの彼女が今後に悩んでいるというのだ。夜中2時に起きて、今後を考えてしまうと。
去年から猛威を奮っている新型コロナウイルス。何でもかんでも我慢を課されてきた……そう思っていた。出来る範囲内で人生を楽しむには……そう考えてきた。
でもマララさんのコメントには、「今後への不安が『この状況』に由来すると一切述べられていなかった。大学卒業後に道筋が立たないのも、将来に思い悩んでいるのも、それらは決してコロナのせいではない。そう割り切れるのは、個人の力では解決し辛い問題ーーー女子教育への制限や政治的不安を抱えた国で育ったからなのかもしれない」と。
「でも『コロナありき』で考えることは今後外せない視点なのは確かだ。コロナがなければ……と考えるのではなく、その事実あってこその状況でプランニングをしなければならない。時間を止めたままでは、新しい扉を開けられない」。
マララさんのインタビュー記事を読み、私も自分の目で直視しようと思う
ドライヤー終了と同時に目を開ける。鏡に映った自分は別人だった。一つ、インタビューを読んだ後に冒険を追加したのだ。
前髪を作った。長い前髪とマスクでは顔の表情が伝わりにくい。小学生ぶりの前髪はなんだかこそばゆいが、自分の中にニューノーマルが出来たみたいでわくわくする。
そして、次に手を加えたのは目。コンタクトデビューだ。視力が落ちてきたと実感はしていたが、時としてぼやけて見えることが、社会と私の間に一定の距離を確保してくれている気がして嫌じゃなかった。
でも今、この世界を直視しなきゃいけないと感じた。都合良く見える範囲を変えていては、いつか自分もぼやけて見えてしまう気がした。そして、それを時代のせいにしてしまう気が。
世界のせいにしない。自分で「なりたい自分」になっていくんだ
インタビューの最後、マララさんは番組制作に意欲を示していると書かれていた。ベストセラー作家、活動家、基金創設者……数々の肩書きを持つ彼女は、それでもなお時間を止めることを恐れているかのように精力的。それはきっと、常に今の世の中を受け入れて、その上に立って先を見ているから。
よく考えてみると、キャビンアテンダントになりたかったけれど航空会社の募集がかからないから違う道へ歩み始め、海外への渡航を優先順位から外して国内の離島へ渡った友人は周りにもいる。待つだけでは変われない。
うんうん。望んではいなかったけど、今年は小さい時の夢で国民的ヒーローのアンパンマンになれたんだもの。世界のせいにしない。自分でなりたい自分になっていくんだ。