お洒落な人だけが入れる場所だと思っていたスタバに私は入れなかった
わたしは割とひとりが好きだ。
友達や家族と外食するのも好きだけど、ひとりで行ってみたいお店に行くのはワクワクするし、家の中でひとりダラダラしながら本を読んだり、映画を見たり、ボーッとしたり、そんな時間も大好きだ。
そんな私だが、最近やっとデビューできたひとりがある。
それが「ひとりスタバ」。
そもそも私の中でスターバックスは「お洒落な人」だけが入れる場所だった。
田舎に住んでいる私が、初めてスターバックスの存在を知ったのは中学生の時。近所のイオンタウンの中に出来たのがきっかけだった。
ガラス張りの店内、若い店員さんがニコニコ動き回っていて、中ではスーツを着た人がカチカチとパソコンをいじっている。
今となっては珍しくない事だが、当時は「大・中・小」以外でサイズを頼むという事がお洒落で怖くて(お洒落で怖いとは)、ショートだかトールだかどっちがどっちなのか分からないし、なんだか英語表記ばっかりだし、なんだか躊躇いがあって私は中々スタバに足を踏み入れなかった。
それは大学生になってからも同じで、友達に誘われたときぐらいしか行くことはなく、毎回新作の通知をSNSで眺めては、「いいなあ美味しそうだな、私もいつかは一人で……!」そう意気込む事が毎回。
結局、意気込むだけなんだけど。
緊張とウキウキした気持ちを持ってくぐった自動扉。頼んだフラペチーノ
そんなちっっちゃな一歩が踏み出せなかったわたしも、ついにひとりスタバデビューをする日がやってきた。
ずっと読みたくて予約していた本が借りられるという連絡が図書館から来て、そのお気に入りの本と共にデビューするぞ!と思い立ったのだ。
緊張とウキウキした気持ちに挟まれながら、自動ドアをくぐる。そんなに緊張する事じゃないはずなのにな、私何してんだろ、なんて気持ちにもなりながら、でも緊張は最高潮くらいのままで、SNSで気になっていた新作のフラペチーノを頼む。
「サイズは一番小さいのでお願いします」「ごめんなさい、ちょっとこれはワンサイズしかなくて……」なんて恥ずかしいやり取りもしてしまったけど、気にしない気にしない。無事に注文を終えて、一番端っこの席に座る。
誰も私に興味なんて持っていない。気付けばリラックスして本の世界へ
お洒落な人しか座れない、と思っていたその席に座ってみればなんてことはなくて、仕事をしたり、本を読んだり、友人と話したり、誰も私に興味なんて持っていなかった。
当然の事なんだけれどそれを感じられた途端、すごく気持ちが落ち着いて、気づけばリラックスして本の世界に入り込んでいた。
読み終わる前に飲み物が終わってしまって、そこはやっぱり小心者。これ以上いることが出来ず、読みかけの本を閉じてお店を出た。
ガラス戸を使ってマフラーをまき直して歩き出す。
おろしたばっかりのブーツが、一目惚れしてアルバイト代で購入した黒いアウターも、家を出る前は「なんか変かな?」なんて思ってしまっていたのに、今はちゃんと似合っているように思えて、なんだか自分が急に大人びて見える気もして、自分って単純だなあ、ちょろいなあ、でもそれも幸せだなあ、なんてひとりで笑ってしまった。