私はずっと、19歳でいたかった。
まだ成人になっていないという安心感があるし、お酒も断りやすい。だからと言って、大学生になりたてな感じもない。ちょうど良い。

そんなことを思っていたのは、3年前である。今は22歳になり、3ヶ月後には社会人として働き始める。
小学生、中学生、高校生、大学生と、短いステップを登ってきたが、ついに社会人。
社会人の先には、どんなステップがあるのだろうか。社会人になった途端、急に一つのステップが先の見えない長いものになる。やはり、ここで「大人」の仲間入りなのだろうか。4月から急に大人になる予感は、今のところ全くない。

大学生になった最初の1年間で、たくさんのことを経験した

大学生のステップに入った最初の1年間で、私はたくさんのことを経験した。

人口100人ちょっとの九州の離島へボランティアに行き、初めましての大学生8人で5日間一緒に過ごした。真夏の暑い日差しの中で農作業をしたり、透き通った青い海ではしゃいだりした。当時は怖くてできなかった飛び込みは、このボランティアの後にいくつもの離島へ足を運んだことで、今ではへっちゃらになった。

初めて行った東南アジア・ラオスでは、これまた初めて昆虫を食べた。なんの虫かは分からないが、コオロギのような見た目だった。
エビの尻尾の成分はゴキブリの羽の成分と一緒なんて聞いたことがあるが、この虫を食べながらきっと事実なのだろうと感じた。

大学生になってフットワークが軽くなった私は、東京から高速バスに乗って名古屋まで行き、学生が集い語らうイベントにも参加した。夜行バスを使って、その日のうちに名古屋を後にした。初めての名古屋だったのだから、美味しいものでも食べてもっと名古屋を満喫すれば良かった。

「若いのにすごいね!」という言葉は、自分が認められたように感じた

夜行バスといえば、和歌山へ初めてのひとり旅に行った時にも利用した。後ろの人に声をかける勇気がなく、リクライニングせずに11時間以上バスに揺られた。
持ち物はリュック一つ。高校生の時は、たくさんの教科書やノート、ジャージにお弁当を入れても余裕があった大容量のリュックに、3泊分で足りるのに念のためと余分な洋服や洗面用具をパンパンに詰め込んだ。
ちなみに、初めてのひとり旅に和歌山を選んだ理由は、昔からみかんが好きだから。

そういえば、最近は夜行バスに乗らなくなり、遠くへの移動はもっぱらLCCだ。新幹線にはまだ手が届かない。

そんな感じで、大学1年の頃からあちこちに足を運ぶ中で、たくさんの大人と出会った。
まだ18歳、19歳の私に、多くの大人が「若いのにすごいね!」「まだ未成年なの!?」と声をかけてくれた。それが心地良かった。
大学で、真面目に講義を受けている振りをして、ちょっと良さそうな言葉を使ったレポートを提出するだけでは得られない優越感に、その時だけは浸ることができた。
だから、そういった言葉をかけてもらえなくなるのが嫌で、私は19歳でいたかったのだろう。そんな自分を認められるなんて、ちょっとした心の余裕が生まれている。

今にして思えば、私よりずっと若くても、もっと面白いこと、すごいこと、楽しそうなことをしている人はたくさんいる。私の視野がどれだけ狭かったことか。

どんな私になるのか想像がつかないなら、想像力次第で何にでもなれる

こうやって振り返ると、ほんのちょっと、本当にちょっとだけ、自分自身の成長に気づくことができる。だが決して、大人になったから、ではないだろう。

遠い未来に感じる30歳の私は、もう大人になったと感じているのだろうか。
30歳の私が何をしているかなんて全く想像がつかないが、少なくとも、移動手段に新幹線を選択できるようになっていて欲しいとは思う。
ただ、どんな私になるのか全く想像がつかないのなら、むしろ想像力次第で何にでもなれるような気もしてくる。

これからどんな大人にでもなれる、そんな気分だ。

結局のところ、何をもって大人と言えるのかは分からない。
とはいえ、あれができるようになった、こう考えられるようになったと、小さなステップを少しずつ踏んでいくうちに、「ああ、自分も大人になったな」といつか感じられるような気がする。

こんな文章を書くようになった自分は、また一つ小さなステップを登ったのかもしれない。