あの頃、「可愛いこと」は洋服の絶対条件で、ピンクはその最重要項目
小さい頃大好きだったおジャ魔女ドレミやセーラームーンには、可愛いピンクのアイテムがたくさん登場した。
強くて可愛い彼女たちみたいになりたくて、変身アイテムやステッキを誕生日やクリスマスが来るたびに欲しがった。
玩具屋さんのショーケースに飾られた魅惑のおもちゃ達を前に目をキラキラさせる私を、両親は「そんなの絶対振り回して襖や障子を穴だらけにするんだからダメ」とプレゼントシーズン毎に引き剥がすことは恒例行事。
おもちゃがダメなら衣装を!と、子供向けのなりきり衣装をねだってみたこともある。衣装なら……と両親も財布の紐を緩ませかけたが、いざお店に行ってみると当時から恰幅の良かった私に入るサイズのなりきり衣装は無かった。
文字通り泣く泣く諦めた夢と希望と可愛さに溢れた衣装たちの代わりに、当時の私のタンスの中身はフリルやリボンが沢山ついたピンクの洋服たちがぎゅうぎゅうに詰まっていた。
当時の写真を見ると、セーラームーンのキメポーズをバッチリ決めたピンクまみれの女の子がそこにいる。
あの頃の私は「可愛いこと」が洋服を選ぶ絶対条件で、ピンクはその最重要項目だった。
小学生になると興味は少年漫画に移り。ピンクが女々しく思えた
小学生になると、だんだん所謂ニチアサと呼ばれるものを見なくなっていった。
プリキュアやおジャ魔女はちっちゃい子が見るもの、という小学生じみた背伸びの影響だ。
ニチアサを卒業した私が次に興味を示したのは、犬夜叉やコナンをはじめとした少年漫画原作のアニメたちだった。心躍る冒険活劇や迫力満点のバトルは当時の私を夢中にさせた。
物語に登場する武闘派の女性キャラクターに憧れて、私は段々とボーイッシュな格好を好むようになっていった。
パンツスタイルは当たり前、髪の毛もバッサリショートにし、洋服から持ち物に至るまで青系統のものでまとめる様になっていった。
男の子の様な振る舞いをし始めると、次第にそれまで大好きだったピンクやフリルやリボンというものが急に女々しく思え始める。
ピンクはいいの?と聞いてくる親に水色が好きなんだよねーと答えては、新しく買う服買う服青系統にしていたら、小学生の成長期も相まって私のたんすは見る見るうちに真っ青になっていった。
おしゃれには無頓着でも、相変わらず「青」へのこだわりは強い
小学校を卒業し、中学に進学すると平日は制服を着て学校に行くし、休日は家で寝間着のままゴロゴロしているから私服、と呼ばれる服をほとんど持たなくなった。
季節の変わり目に年に一、二度ユニクロに行って白や黒、ベージュの無難な色の服を数着買ってたまの外出はそれを着て過ごす。
その頃にはとっくにオシャレへの興味なんて無くなっていて、服なんて着れればいい、くらいの位置づけだった。
そんな中でも相変わらず青へのこだわりは強く、持ち物は全て青で固めていた。
今思えば、当時なんであんなに青に固執していたのかと不思議に思う。
私といえば「青」なんていう刷り込みが周りにも自分自身にもあって、そうやって脳死で選択するのが無難でラクだったんだと思う。
思春期の時期をオシャレに無頓着に過ごした私は、衣類はモノトーン、持ち物は青で纏めていた。
そこまでくると可愛らしいピンクは気恥ずかしく、THE女の子のアイコンの様な可愛い子が身につけるものだと思うようになっていた。
そう、女子力のない私には無縁の色だ。
私は私が思っている以上に案外ピンクに愛された人種なのかもしれない
そう思って生きてきて、気づけば20代後半になっていた。
人間、歳をとると、若い頃にこだわっていた色々なものがどうでもよくなるように思う。
子供っぽいからと離れていたプリキュアやセーラムーンを周年記念を機に見直したら今でも彼女たちは強くて可愛いし、やっぱりフリルとリボンとピンクは最強だ。
幼い私を夢中にさせたガーリーでファンシーな物たちは今でもやっぱり素敵で、気づけば持ち物にパステルカラーやピンクが増えた。
そしてなによりメイク、多感な10代から20代前半をオシャレと縁遠く生きてきた私も20代後半になり、生まれたそのままでは押し通せないあれやこれやのアラが増えてきた。
重い腰を上げてメイクに取り組み始めた私が拙い知識を必死で寄せ集めたところ、どうやら私はブルベというやつらしい。
無難で落ち着いているだろうと選んだオレンジ系統のコスメは、メイクの上手い下手以前に肌から浮いていた。
反対に甘すぎると買った後に後悔したピンク系のコスメのほうが、周りからのウケがいい。
勿論人のいうことを100%鵜呑みにするわけではないが、私は私が思っている以上に案外ピンクに愛された人種なのでは?なんて最近は思い始めている。
年齢的にももうぶりぶりのピンクは似合わないかもしれないけれど、幼い頃の自分に素直になって好きなものを好きなように手に取ってもいいのかもしれない。
これが今の私とピンクの距離感だ。