「色んな感情を持つことは自然なこと。それが生きるということ」――。この言葉のおかげで、私は生まれ変わった。

昨年の12月、私は初めて臨床心理士の先生とのカウンセリングを受けた。
今の勤務先に勤めて3年が経つが、今の職場に転職してすぐに、私は同僚からセクハラとパワハラを受けた。仕事中に過呼吸になることが多くなり、直属の上司に相談した結果、私は別の部署に異動することになった。

自分が異動することになるとは想定外だった。悔しかったし、心から残念に思った。
そのトラブルを経験してから既に2年半の時が過ぎているが、私はトラウマを克服できないでいた。

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昨年の初夏、会社から別部署への異動の打診があった。ただ、その部署に異動すれば、以前セクハラ・パワハラをした加害者と接触する可能性があり、大丈夫か?と問われた。私は、頭では「頑張りたい、自分のキャリアを伸ばしたい」と意気込み、会社には「新しい部署で頑張りたいです」と伝えていた。一方で、「怖い、もうあの人と一切関わりたくない」という気持ちでいっぱいだった。

結局、私は精神的に病んでしまい、異動の話は白紙になった。この時、「意思」と「感情」は全く別物であると私は痛感した。一度、心の傷を負うと、いったんは立ち直れても、ふとしたことをきっかけに、すぐに自分が崩壊してしまうのだと思った。この時は、「こんな苦しみが続くのであれば、死にたい」と、本気で思っていた。

私の異動は叶わなかったが、代わりに自分と同じ部署にいた同年代の女性が異動することになった。ただただ、悔しかった。
正直、「自分は彼女より頑張っている」と自負していたし、過去のセクハラ・パワハラが原因で自分がキャリアアップを我慢しなければならないことが腹立たしかった。

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それ以降、会社に対する不信感が募るばかりで、仕事へのモチベーションを維持するのが本当に大変だった。ただ、この「モヤモヤ」を抱えたままでいる自分に対しても嫌気が差していた。

保健師だった母の助言で、私はカウンセリングを受けることにした。
先生との面談は1回50分。私は、自分が経験したこと、思っていることを全て吐き出した。
「過去のトラブルのせいで自分がキャリアを諦めることになり、悲しい」
「自分よりも頑張っていない同僚に先を越されたのが悔しい。そんな風に思ってしまう自分に対しても絶望する」
「セクハラやパワハラは殺人と同じだ。体は生きているが、心は何度も、何度でも死んでしまう」
涙が溢れ、顔をぐちゃぐちゃにしながら、私は話した。先生は優しく話を聞いてくれた。

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先生は、「今抱えている、悔しい、悲しいという負の気持ちをバネにして、目の前の仕事を一生懸命頑張りなさい」と言った。チャンスはまた必ず来るから、その時のために、成長しましょう、と。さらに、「他人に先を越されて悔しいと思うのは当然。色んな感情を持つことは自然なこと。それが生きるということ」と教えてくれた。

心がスッと、軽くなった。同時に、救われた思いがした。
たしかにそうだ。自分が抱いてきた感情は、人間として当たり前のものだった。

それ以来、私は自分に失望したり、「モヤモヤ」した気持ちを抱えたりすることがなくなった。完全にトラウマを克服できたというわけではないが、カウンセリングを受ける前の自分から、生まれ変わった気がしていた。そして、「自分は羽生結弦。4回転半を跳ぶ男!」と、アスリートになった気持ちで、外野の雑音や低レベルな問題にはかまわず、自分の技をひたすら磨こうと決意した。

「新しい自分」になれた私。2023年は、これまで自分を支配していた負の感情と決別し、今まで以上に仕事を頑張りたい。いつか訪れるチャンスを掴むために、自分の技を磨きたい。それが私の宣言だ。