この夏、会社から課された長期北海道出張のおかげで、4年間のペーパードライバーを卒業することになった。晴れて車の運転が日常になったので、秋になったら、普段いる島根をでて東京の友人や同僚を山口県下関や北九州に連れて行きたい。

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ずっと東京生まれだった私は、正直山口や九州方面は一度も行ったことがなかった。しかし、島根に引越してたびたび夜行バスで博多にいくと、博多から山口県の唐戸市場や北九州の門司港にまで足をのばせる機会を初めて持てた。

去年の梅雨明けにいった山口県唐戸市場は本当に圧巻だった。目の前に架かる関門橋を見渡しながら、地産の新鮮でリーズナブルなふぐ刺しやふぐ天をつまむのは、一年間分の田舎暮らしのハイライトをその日一日に凝縮したような贅沢だった。
また、関門橋を渡ると、すぐそこには北九州の街並みが広がっている。

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私は、いつも金曜の夜に島根を夜行バスででて博多に向かう際は、九州の入り口である壇ノ浦SAに立ち寄る。特に夏〜秋にかけては、ちょうどAM5:30頃、朝焼け真っ只中の時間帯に壇ノ浦に着ける。そこで、5匹500円の揚げたてのふぐ天をつつきながら、目の前に広がる関門海峡越しの朝焼けを見つめる。

はじめて朝のサービスエリアでこの景色を見た時は、「これが九州なのか!」とここから旅が始まる予感や興奮に包まれたのを覚えている。東京生まれの自分にとって、同じ国内でもそれだけ九州は遠く離れた場所で、どこか夢の島のような秘密の森のような大自然の憧れの場所でもあった。

そんな関門橋は、大好きでずっと未知だった山口県と北九州を結ぶ。どちらも一度訪れて最高だったので、いつかは、自分の運転で誰かを連れてどちらも行きたいと思っていた。 
ちょうどその頃、会社から北海道長期出張を命じられ、大学卒業以来のペーパードライバーを脱して、週末ドライバーになることになった。

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秋になったら————
今年の秋に、自分が島根にいるかどうか不明だが、もし中国地方にいるならば、やはり職場の東京出身の同僚や都内にいる友人を一度は唐戸市場や門司港に連れて行きたい。連れて行って、地産のふぐをたらふく食べ、門司港で焼きカレーを食べながら、中国留学時代の思い出話などしたい。そして、夜になったら小倉にいってビールを片手に北九州の百万ドルの夜景を眺めたい。

地方と東京のハイブリット生活を始めて、もうすぐ3年目。島根からバスで行ける神戸や博多を訪れるたび、自分はやはり都内出身の人間であり”都市”が好きなんだなと実感するが、東京生活では巡り合うこともなかったであろう地域の秘宝を発見してしまった時、やはり島根に移って良かったなと思う。都内にいたら台湾か京都など、国内であればアクセスの良い代表的観光地にしかいかないでいた。

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博多など久しぶりに都市圏を観光すると、同世代女性のファッションやメイクのメリハリ、飲食店の選択肢の豊富さ、味と価格の卓越さ、本屋の書籍の種類の多さ————など、リーズナブルで飽きない、ウィンドウショッピングだけで一日を潰せることに驚いたり刺激を受けたりする。

一方、たまに下関や門司港に来ると、都内にいたら他の観光地に埋もれてわざわざ来なかったであろう場所で、地元価格の新鮮な地産の絶品を食べたいだけ食べ、晴れた空の下、見たことのない穏やかなコバルトブルーの国内海峡を見渡し朝日を見れるのはなかなか贅沢だ。ここに来るたび、自分の視野と国内への探求心が広がるのがわかる。

20代後半で、同世代が東京で仕事に追い追われバリバリ会社員生活を送っている中、休日に九州でこんな自然な贅沢を一人で味わい楽しんでいる自分がいると思うと、秘境だった地域のお陰で自分好きにしてもらったのだと、やはり地域や大自然への畏怖に回帰する。
今年の秋も、自分らしく、もっと日本や国内を好きになるよう全国各地のまだ見ぬ秘境に出かけたい。