高校を卒業するまでは、生粋のインドア派だった気がする。
感染症の流行や「寄り道禁止」の校則もあり、ほとんど毎日家と学校を往復するだけの高校時代だったけれど、案外そんな毎日に満足していた。どこかに出かけるのは好きじゃなかったし、家にいる方が気が楽だ。

クラスのいわゆる「1軍」みたいな女の子たちが、テーマパークやカフェで撮ったらしきキラキラした写真をSNSに載せているのを見て、私とは別の世界の住人だな、なんて思っていた。家族旅行や修学旅行といった類のものも、当然あまり好きではなかった。

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転機は、大学1年の秋。趣味を通じて知り合った同い年の男の子と付き合い始めた。
頭の回転が速く、物知りで、よく笑う。それから、生まれてから20年間東京で育ってきた私にとって、彼の口から飛び出す関西弁はとても新鮮だった。
彼は大阪で生まれ育ち、今も私の住む東京から500キロほど離れたその地で暮らしている。

彼が東京に来ていた際に初めて会って意気投合してから、付き合うまえに1度だけ、大阪に遊びに行った。
大阪に行くのなんて10年以上ぶりで、1人で新幹線に乗るのも、1人でホテルに泊まるのも初めて。でも不思議と不安はなくて、それまでは憂鬱で仕方なかった旅行に、初めて心を躍らせている自分に気づいた。

付き合いはじめて1年と4ヶ月ほど、彼との関係はまだ続いている。高校時代のインドアな私を知っている友人たちは、「あんたが大阪との遠距離恋愛なんて信じられない、成長だね」と笑う。
お互い、授業にバイトにと忙しい日々を送っているが、気が向いた時には連絡を取り合い、週に1度は電話をして、1ヶ月半に1回くらいはどちらかの地元に会いに行く。同じ大学やサークル、バイト先に恋人がいる友人に「寂しくないの?」と聞かれるときもあるけれど、案外私にとってはちょうどいい距離感だと思っている。

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2人で色々な場所に行った。大阪の有名な観光地はわりと巡った気がするし、京都や神戸に足を伸ばすこともある。そんな日々を過ごしているうちに、インドア派な私はいつしかなりをひそめてしまった。

休日はどこかしらに出かけていることが多くなったし、旅行にもすっかり抵抗がなくなった。この春は1人で広島まで行く計画を立てている。

高校時代の自分が見たらびっくりするだろう。でも、出かけるのは案外悪くなかった。
知らない土地で美味しいものや綺麗な景色に出会うのは楽しい。気を許した誰かと行くのも、1人で気ままに動き回るのもいい。もっと早く気づいていたら、私の高校生活はちょっと違っていただろうか、とも思うけれど、時間のたっぷりある大学生の今だからこそ、この日々を楽しめているような気もする。

私にとって、外に出ることはそのまま、「視界を広げること」だった。外に飛び出すきっかけをくれた彼には感謝している。
今年は就活を見据えた忙しい日々が始まりそうだけど、今の程よい距離感を保ちつつ、まだまだいろんな場所に一緒に行きたいね。