皆さんは2D対4D比をご存じだろうか。胎児の頃に浴びた男性ホルモンの影響で人差し指と薬指の長さの比率が決まるというもので、男性は薬指の長い人が多く、女性は両者同等か、人差し指の長い人が多いという。

人差し指に比べて薬指の長い人はリスクのある行動を恐れず、社会的成功を収める者が多いという。また、女性の場合PMSが重く、姉御肌の人間が多い。
これらは迷信ではなく科学的に証明されているもので、メディアにも何度も取り上げられるほど有名な話である。

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私が初めてこの話を知ったのは2016年、大学院生向けの全学共通科目でのことだった。
性とは、受精や生殖といった生物学的なものと社会進出等といった社会的なものの二方によって構成される、まさに文と理が融合した分野だ。

この講義では、わざわざ理系の学生さんが雪の中のキャンパスを何百メートルも移動して私のいる文系棟に来て受講し、意見を交換することのできる唯一の機会である。性の歴史や生殖など扱う分野も多岐にわたり、多角的な視点から性について知ることができる。
この分野を担当するのはNHKにも出演した、性決定について研究する理学院の女性教授である。

胎児の頃に浴びた男性ホルモンの値が指の長さの比率として現れ、それが今後の体質や性格を決定することは他の受講生にとっても関心事のようで、みな一斉に指の長さを比べ始めた。私も周囲の人と同様に指を見比べるのだが、ここで長年抱いていた疑問を解決することとなった。

みんなで折り紙をしたとき、調理実習の時、私は他の女子と比べて薬指がとても長かった。みな指の長さや爪の形が違うように、これも一つの特徴なのかと特に気を止めなかったが、そこには今後の体質や性格を左右する重要な指標が隠されていた。

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思えば私の人生は、常に挑戦し続けていた。
無理だと言われた受験に挑み、就職活動では自分の専門外の分野を直前に学び、倍率100倍を超える企業を中心にエントリーした。文系大学院生の主な就職市場はシンクタンクの研究員であり、私の専門とする社会学、教育学は扱う企業が少ないことから、専門外である地方創生を独学しながらの就活となった。

専門外の分野でそれを専門とする大学院生と戦うのは無理のある話で、就活はことごとく失敗に終わった。ごっそりメンタルをやられてしまったが、両親からは、
「高望みばかりして」
と、受験時以来の強い叱りを受けた。

院生時代の研究では、地元の公立中学校に「創立時から現在までの歴史的変遷を調べたい」と無理下で調査依頼を行い、一つの中学校に断られても諦めずに他の学校で承諾を頂き歴代の教員の中から調査依頼者を選定し、定年退職した教員を含めて調査を行い論文にまとめた。感謝の意を込めて完成した論文を送ると、各先生方から高評価を頂くことが出来た。
大学院修了後は27歳職歴なしというハンディを背負い公務員試験一本に絞り無事成功したが、その倍率の高さからこれまた危険な賭けとなった。終わった頃には18倍を乗り越えられる力があることを知ったが、周囲も就職浪人中は気が気でなかったようだ。

気付けばここ数年のクリスマスの半分以上は挑戦に潰れていた。就職してからは、想像していた以上にPMSが重いことが分かった。
食欲や感情こそは範囲内に止まっていたが、眠気が強く出るタイプで、勤務時間中にうっかり寝てしまったことがあった。次の日が出勤日である時は十分に睡眠を取り、飲酒も控えていた上の出来事であったから、そのショックは大きいものであった。

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私はふと物思いにふけった時にこう考える。
薬指の長い女性は幸せになっているのか。リスクの高い行動を取って成功したことも多かったが、一方その分、挫折もあった。人生に挑戦は必要だが、一方安定も必要ではないだろうか。これまでの経験が私にそう教えてくれた。

人生は挑戦と安定の平衡を保つことが重要である。これが、今現在の私のたどり着いた答えである。