雪の日を喜べるほど、寒さに強大人にはならなかった
雪遊びを最後にしたのはいつだろうか。
銀世界の幻想的な雰囲気がつくるひんやりとした特別な空気感はとびきり気に入っているが、最近はこたつの中で窓を眺める程度である。

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さて、私の座右の銘は小学生の頃からただ一つ「晴耕雨読」である。
クラスでは読書好きの男の子一人だけと被った。
晴れの日は農耕に勤しみ、雨の日は書に親しむ。
読書好きにとって、理想の生活である。

雪の日も近年では例外ではなく、おうちデー。
今日は私の寒くて外なんて出かけられるか!という日にオススメなおうちデーの過ごし方を紹介したい。

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まず用意するのはお気に入りのカップと紅茶。
大好きな刑事ドラマのリスペクトも込めて、ちょっとだけ高めから注ぐ。
ふんわりと香る茶葉とその熱に癒される。
私が紅茶好きなので例では紅茶だが、コーヒーでもハーブティーでも、あったかいコンポタでもいい。
香りに癒され、あったかさを味わう。
寒い日のあったかさ、贅沢すぎる。

BGMにはクラシック。
Spotifyでも何でもいいのでクラシックをかける。
スピーカーの音質にはあまりこだわっていないので、こちらもなんでもいい。
クラシックは歌詞のないものであればよい。
クラシックをかける理由は単純、格好良いから。
頭がごちゃごちゃにならない音楽であるならクラシックでなくともなんでもどうぞ。

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さて、ここからが本番、雪の日スペシャル。
本棚かkindleを探して、雪山ミステリを見つけ、一気読みする。
夏には孤島ミステリ、冬には雪山ミステリ。
これがミステリオタクの嗜みであり、特に雪の日なんて絶好のチャンス。
私自身も一緒に雪山にいるような感じに没入しやすくなる……気がする。
私調べなので、あまり責任は持てない。
きっとこれよりみんな寒くて、食料もなくなっていくクローズドサークルに精神がすり減っていくのだろう……と、とびきりあったかくしながら思う。
過去の雪の日には東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』が選ばれた。
文句なしの名作雪山ミステリで、外の雪が解けるまで室内でぬくぬくと読み進めた。

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気が付けば外は灰色がかったオレンジに染まっている。
読み終えた本を閉じ、勇気を出しベランダへと足を運ぶ。
元気な子どもたちの声が公園から聞こえるが、朝のような真っ白な世界はもうそこにはない。
土と靴跡でぐちゃぐちゃになった絨毯には、生活するまちの人たちの雪の日の痕跡。
二本にどこまでも伸びる線に、雪の日でも仕事へと向かわなければならない社会人の厳しさを思い苦笑した。

◎          ◎

明日にはきっと一部は道路を覆う薄い氷となって、私を困らせるのだろうなとも思った。
冷たい空気を深く吸い込んで肺を満たす。
清々しいのにどこか苦しくて、生きてるって感じる。
とはいえ、寒がりの人間には外で雪の日を満喫するのはこれが限界で、すぐに室内へと逃げ込む。
そしてまた、コンロに火をつけ、紅茶で暖をとるのだ。