事件に巻き込まれ、心を病んだ。制度と人に支えられて目指す復職

一昨年の冬、仕事に出た先で、暴行事件にあった。酔っぱらいに絡まれて、30分殴られた。それ以来、同じような男性が怖くなった。
警察は教えてくれなかったけれど、行政対象暴力という言葉があるのを上司に教えてもらった。
窓口のすぐ正面が自分の席で、来庁した市民に殴られるような気がして、怖くなった。席を事務室の奥に変えてもらった。
春、人事異動後、私は元の部署のままだったが、市民に殴られ続けているような錯覚を覚えるようになった。
今、振り返ると、それは自分の妄想なのだけれど、その時には、今にも誰かが私を殴りに来るような、殴られ続けているような気がしていた。
あの日がずっと続いているような気がしていた。
知らない男性がいることが怖くて、ジム通いを止めた。休みの日は寝て過ごすようになった。職場のカウンセリングに通い始めた。歯磨きとお風呂ができなくなった。
夏、お酒を飲んだ時にあの日に戻ってしまい、パニックを起こして救急搬送された。心療内科の受診を勧められた。
職場のカウンセリングの心理士さんに、私に合いそうな病院の探し方を教えてもらった。3ヶ月先まで予約ができないといった病院が多く、これまでに心療内科の予約が取りづらいのか、と初めて知った。
心理士さんに聞いた条件に合う今の病院の予約が取れた。過呼吸を起こすようになっていたので、初診は妹に付き添ってもらった。うまく話せなくなるかもしれないから、何が起きたか、どう感じたか、時系列のリストを作っておくといいよ、と休職経験のある大学の先輩に教えてもらった。
診断は、PTSDとうつ病。
休職は抵抗があった。戻れなくなる気がして。ずっと休み続けてしまうんじゃないかと思っていた。休職だけは、しないで治さなきゃ。
休もう、と思ったのは、昔の上司のKさんが休んでいると知ったから。Kさんにラインした。
「どう休職に入りましたか……?」
Kさんからの返事は、「朝、ご飯が食べられなくなったから」とあった。他にも、いつ病院に行って、どんな言葉をもらったかも教えてくれた。
Kさんの状況と、自分がとても似ていた。このまま働き続けていたら、もしかしたら私はずっと不安を抱えながら過ごすことになるかも。
初めは、2ヶ月休職をした。休職は診断書の4400円を払って、上司に提出したら、できた。
休職をきっかけに一人暮らしを始めた。一人暮らしの家で、初めはひたすら寝ていた。昼間起きていられるようになると映画を観るようになった。小説もたくさん読んだ。結婚を考えていた彼氏には振られてしまったが、休職中に散歩や食事に連れ出してくれる友人はいた。
私の休職は、体調をみて3ヶ月延長し、計半年休職した。
見知らぬ男性に殴られることはあるかもしれないが、可能性は低い。身構えることは減っている。
Kさん、心理士さん、今もお世話になっているお医者さんに、話を聞いてくれる友人。休職中、私の仕事を変わってやってくれた職場の先輩。
私の休職は、いろんな人に支えられていた。
公務員は、有給の病気休暇制度を利用できる。そのあとの病気休職でも、1年間は給料の8割が保障されている。自分の健康を第一に考えつつ、生活も保持できる制度にも私は救われた。
制度や周りの人は意外とあたたかい。
完全に戻ったわけではないし、殴ってきた見知らぬ男性を許すつもりはないが、私は休むことができて良かった、と思っている。
今は復職訓練中。無事、仕事に復帰できることを願っている。
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