推しの活動休止で、常識あるオタクを演じようとしていた自分に気づいた

わたしと色メガネの関係性を語る上でテーマになるのが、"オタクと推し"だ。今まで何人ものキャラクターやアイドルを応援してきた。色んな界隈を行ったり来たりして、最終的には芸人オタクとして落ち着いた。
元々母がお笑い好きだったので、小さい頃からバラエティ番組を見るのが当たり前だった。いつしか私ものめり込むようにハマってしまい、面白いという感情から推しという存在にまで変化していったのだ。同級生でお笑い好きなんて滅多にいないため、SNSで繋がった年齢の近い友達と一緒に劇場に行ったり、好きな番組を語ったりするのが主だ。
正直、今までのオタク人生の中で今が1番楽しいと言える。バラエティ番組やYouTubeも面白いが、生で見るお笑いというのは別格だ。ネタライブ、企画ライブ、誰かの主催ライブ。様々なジャンルがあるが、どれも必ずと言って良いほど拍手笑いが起きる。まさか人生の中でお笑いオタクになるなんて思わなかったが、今が1番楽しいというのは事実だ。そんな私には、お笑いオタクになるもっと前から存在しているルールがある。
推しのダメなところは、ダメと言える人間になる。これは、私が推しを応援する上で決めいてる独自のルールだ。例え心から好きな人間でも、大きな不祥事を起こしたり、周りに迷惑をかけるような過ちを犯した場合、きちんと否定しなければならない。
だがそれは、あくまで自身の心の中で整理整頓しているのであって、匿名で叩いたり、本来の目的とは関係のないことで誹謗中傷をする行為は絶対にしてはならないのだ。しかし最近、このマイルールが崩れ落ちるような出来事があった。
推しが活動休止を発表した。警視庁にも関わる深刻な問題だった。辛かった。心にぽっかりと穴が空いたような虚無感に襲われた。貴方のために毎日頑張って生きてきたのに。私のものでもないのに、勝手に裏切られた気分になった。明日から私の"好き"が存在しない世界を歩まなければならないのか。そう感じた瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。大袈裟に見られるかもしれないが、私にとってはそれほど大きな存在なのだ。
それから何とか普段の生活をおくれてはいるものの、心につけられた深い傷は、そう簡単に治るものではなかった。ダメなところは、ダメと言える人間になる。そう心に誓えていたのは、今まで応援してきた歴代の推したちが、活動自粛や休止を発表していなかったのも大きな要因なのではないかと考える。私は勝手な先入観で、民度の良いオタク、常識のあるオタクを演じようとしていたのだ。実際に推しが活動自粛を発表した今、ようやく分かった気がした。
だが、それらを全て理解した上で改めてダメなところはダメと言えるような人間になろうと感じた。全肯定も、全否定もしなくて良い。ただ、過激な発言や誹謗中傷をネットに載せるべきではないのだ。活動自粛が辛いという事実は変わらない。だが今は、推しとの距離感を見つめ直す大事なチャンスタイムなのかもしれない。いい子ばかりを演じなくても良いんだ。色メガネを外した今、少し前向きになれた気がした。
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