香港に行く妄想はよくすることがある。実際英語はおろか、中国語なんてもってのほか、外国に強い友人も居ない私にはかなり縁遠い場所であるかもしれないが、人生何があるか分からない。いつかちゃっかり香港に行ける日が来るかもしらんと思うと妄想も捗るというものなのだ。

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例えば香港に行ったなら、金持ちが札束を溶かして宝石を塗りたくったようなギラギラした高層ビル群を、それはそれは高級なホテルの窓辺から見下ろし確かにコレは真珠と呼ばれるのも一理はあるなと知ったかぶりして呟きたい。 

例えば夜20時らへんに出掛けたとしよう。夜の少しだけ生ぬるい風に頬を当てながら、ナイトマーケットというディープな夜市に足を忍ばせたい。女人街と男人街という分かりやすくて怪しい露店をふんふんと無駄に声をかけられない程度に気配を薄くしてありとあらゆるコピー商品や日本では見ることのないヘンテコ商品に顔をニヤけさせるのだ。そして勿論景色の次に楽しみであるご飯も抜かりなく味わい尽くす。ちょっと衛生面は気になるけど屋台で安くてたっぷりと入った丼物やあつあつの小籠包、もちもちとした旨味ましまし麺…。

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字面だけで飯が食える。

そんな、なんとなく夏が似合う、夜のそよ風が生ぬるくそよぐ香港に軽くじとりと汗ばんだ肌とざわめく人の声。

皆が憧れる香港に私もいつか訪ねる日を、今の私はぼおっと考えている。