1回目の休職は長く続けるために、2回目の休職は冷静に考えるために

休職者は体調が回復すると、次は復職に向けた訓練をしなくてはならない。それは毎朝決まった時間に起きて、図書館に行くでもカフェに行くでも良いが、私の場合はリワークという手段を選んだ。各都道府県の障害者職業センターで実施されていて、要件を満たせば無料で受講することができる。平日の9時半から15時にセンターに通所し、様々なプログラムを受ける。
私はこのリワークの存在を、病院の貼り紙で知った。自力でどこかに通って作業するより、用意されているプログラムを受けたほうが有意義では。しかも無料。すぐに主治医と会社に相談し、説明会、書類の提出などを経て、無事にリワーク参加が決定した。
リワークは想像していたよりもずっとずっと大変だった。そしてその分すごく充実していた。
休職に至る経緯をまとめて、原因と再発防止策を導き出す。それは講座からヒントを得たり、他の参加者とのミーティングで話し合ったり、カウンセラーとの面談だったりした。
休職前のことを思い出すのは辛かった。自分の弱い部分と向き合うのは辛かった。そうやって少しずつ負荷をかけ、復職後のイメージを明確にし、復職へと近づいていった。
担当カウンセラーとの出会いは、中でも私の財産となった。今まで私の相談に乗ってくれた人たちは皆、私を励まし、慰め、耳触りの良い言葉しか言わなかった。だがリワークよカウンセラーは違った。時には私の悪いところを指摘し、私が言われたくないことも言う。その時はもちろん辛かった。でも自分の休職原因を追究していくうち、カウンセラーの言葉の意味がわかり、私のためを思ってあえて厳しい言葉も言ってくれたのだとわかった。
そうして約3ヶ月間のリワーク受講を終了し、翌週から復職することとなった。やっと復職できて、本当に嬉しかった。また信頼している上司や同僚に会えるのが楽しみだった。
しかし復職はゴールではない。あくまでスタートだ。鬱病に完治という言葉はなく再発のリスクは依然としてあるし、復職して1年が大変だという話はリワークで散々聞いていた。
案の定、復職後の壁はいくつもあった。
まず、休職前と環境が大きく変わっていた。席の配置が違う。ロッカーの位置が違う。パソコンが違う。些細なことだが、どこか私の知っている職場ではなくて動揺した。
また、新入社員が入っていた。しかも同い年の女性だった。さらに私を動揺させたのは、その新入社員が、休職前に私が担当していた業務をしていたことだった。私としては、仕事を取られた気持ちだった。その子が自分の業務を当たり前のようにしている姿を見るのは、耐えられなかった。
それでも私は踏ん張った。すぐにカウンセラーのもとに駆け込んで、感情を表に出さず淡々と仕事をするように言われた。定期的にカウンセラーのもとを訪れ、感情を整理するうち、淡々と仕事をこなせるようになった。
順調に体調も回復し、仕事にも慣れてきたと感じていた、復職して半年後のことだった。
体調が良いとはいえ波があるので、体調が悪い時に離席して休憩をしていたところ、上司2人と産業保健スタッフから、離席が多いと指摘を受けた。さらにそれだけではなく、仕事上で私の駄目なところをずらずらと並べて、沢山注意をされた。言われれば言われるほど、自分が駄目な人間に思えて、どうしようもなく辛かった。「もうやめてくれ」と泣き叫んで、その場から逃げ去りたかった。が、そこをぐっとこらえて、冷静に話を聞くふりをした。
その日から、私が何時に何の仕事をしたか、紙に書いて上司に提出するよう言われた。ずっと監視されているような緊張感で、手足が震えるようになった。
就業時間は淡々と仕事をして、昼休みになるとすぐにカウンセラーに電話をした。声を聞いた途端、涙が止まらなくなった。泣きながら話すと、指摘された内容はそんなに私が悪い訳ではないと言われた。復職者だから悪目立ちしているだけだと。後に主治医にも話した際、「それは酷い」と言っていたので、やはり3人で寄ってたかって私を責めるのは、やりすぎだっただろうと思う。
話してすっきりしたので、午後も仕事をした。3日は耐えた。
だが3日目にして緊張感がピークに達し、「辞めたい」以外考えられなくなった。
またカウンセラーに電話をした。もう辞めたい、と。カウンセラーは、今大きな決断をするのは危ないと言った。一度逃げてみるのもひとつの手だ、と。
そして私は逃げた。2回目の休職に入った。
1回目の休職は、会社が好きで、仕事がしたくて、だからこそ長く続けるために休職した。だが2回目は違う。会社が信用できなくて、ゆっくり体調を整え、冷静に次を考えるために休職した。
今、2回目の休職に入ってから半年が経つ。1回目も2回目と、休職を選んで良かったと心から思う。1回目はリワークで自分と向き合い、いろんなことを学んだ。そして2回目は、冷静に考えることができるようになった。
やっと体調も回復してきて、冷静に転職を考えられるようになった。まだまだ次に歩き出したばかりだ。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。