淡々とこなされる接客、ネオンの曖昧な光。新しいのに懐かしいあの街

大学1年生冬、映画「恋する惑星」という香港に恋した私は、広東語を勉強し始めた。そこから1年、上海留学中に香港に行くことに決めた。
広州に降り立ち、そこから高速鉄道で15分、到着の感覚もないまま香港に着いていた。たった1日の香港の旅の始まりだ。
駅を出ると、王家衛監督が映し出すあの湿度ある風が出迎えてくれた。
雑多に並ぶ建物、竹の足場、勢いよく飛び交う広東語、これら一つひとつが「香港に居る」という感覚を教えてくれる。
空腹の私は香港式喫茶店の茶餐廳へ。淡々とこなされる接客に香港らしさを感じながらフレンチトーストと珈琲と紅茶を混ぜた鳳凰茶をほおばる。新しいのに懐かしい、そんな感覚を覚えた。
次の目的地は、九龍寨城公園。かつて存在した九龍城や歴史や時代の狭間で揺れ動いてきた過去に想いを馳せながらバウヒニアが咲く公園を歩いた。夜にはトラムに乗って、しっとりとした風とネオンの曖昧な光を受ける。
週末の尖沙咀、休日を楽しむ東南アジアの女性達、観光客、お腹を出して歩くおじさん。私は何処に居るんだろうと思った。その感覚が正解なのだと思う。今と過去が交差し、多様な文化を受け入れる懐の深い場所、きっとそれが香港なのだ。
大陸に戻る高速鉄道でこんなことを思った。きっとまた、香港。
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