私は以前から男性に依存してしまう傾向ある。彼氏が途切れずいたり、彼氏がいない期間はセフレが二、三人いたりしたのだ。常に男性の誰かしらとは連絡を取っていたし、休みの前の日は泊まりに行ったり、泊まりに来たり。

その生活は二十歳の頃から約五年間続いていた。

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彼氏が欲しい訳でも、性行為がしたい訳でもなく、誰かと常にいたいのだ。今思えば、私を無条件で好きでいてくれる味方がいる、という安心感に飢えていただけだと思う。高校生の頃までは実家でぬくぬくと暮らし、進学と共に上京してからは姉と同居していた。その後、姉が彼氏と同棲することになり、一人暮らしを強いられたのだが、どうしても一人で生活する自信がなかった。そのため当時付き合っていた彼氏の家に転がり込み、住所変更をしてほぼ強制的に同棲を始めた。その彼と数年後に破局してからは、いろんな男性の家を転々としていた。当時の私は俗に言うメンヘラで、誰かがそばに居てくれないと不安でしょうがなかったのだ。

しかし、二十六才になる年の春、新しい会社に転職した。その転職先は勤務時間が遅く、電車では帰れないので職場から徒歩圏内に住むとう条件があった。そのため一人暮らしをしなければいけなくなった。

人生初の一人暮らしで家具、家電も一から揃えなければいけないし、自炊もしなければいけない。今までは彼氏が食事を作ってくれていたので、全てがほぼ初めての経験だ。家事はやる気になればできるはずなのだが、正直なことを言うと洗濯機の使い方すら知らなかったくらいの箱入り娘だった。心配した幼馴染が引越しから数日間は一緒に買い物に行ったり、家具を組み立てたりとサポートしてくれていた。

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引っ越しが落ち着いてすぐに新しい仕事が始まり、仕事に慣れるので精一杯だった。仕事で疲れ切ってヘロヘロになりながら真っ暗な家に帰り、一人で深夜にテレビを見て眠る。業務中は仕事に関係ない連絡を取る暇などないし、退勤して連絡を返してもその時間にはみんな寝ていて返信が来ない。休日は仕事の勉強や家の掃除などをやっていたら気づいたら終わってしまっていて、友人と遊ぶ気力と体力もなかった。

以前の私だったらきっとそんな生活一週間で悲鳴をあげていたと思う。しかし、仕事が多忙すぎたことが原因で寂しさを感じている暇もなかった。入社して二ヶ月も経てばそんな生活にも慣れてきて、友人と休日に遊ぶこともできていた。

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しかし気づくと以前のような男遊びなどは全くしていなかった。特別連絡を取っている人もいなかったし、今までのセフレたちとは時間が合わなすぎてなかなか会えず、疎遠になっていた。メンヘラ時代はいくらめようと思ってもめられなかったのに、私生活に忙殺されている間にいつの間にかメンヘラ男性依存から卒業していたのだ。

「メンヘラは暇だからなるのだ」と以前からそんな言葉を耳にしていたのだが今回身をもってそれを感じた。今年はこれを卒業したい、と目標を決めることもあるが、案外目標なんて決めなくても、焦らず今のありのままの自分で精一杯生きていれば、いつの間にか卒業できることもあるのだと学んだ。