事実無根の噂。上司から「仲良くしすぎるな」と注意を受けた

職場は戦場だと思った出来事がある。
私は職員の男女比率が半分半分の部署で働いている。職員の年齢は男女ともにほとんど40代から50代であり、20代や30代は片手で数えられるほどしかいない。
そんな職場であるから当然、年齢が近い先輩と話すことが多くなった。1番年齢が近い先輩は男性であるのだが、趣味も似ており共通点も多く、話やすい先輩だったため、かなり仲良くなった。
しかし、定期的に行われる職場の面談で上司から「仲良くしすぎるな」と注意を受けた。
具体的にはその先輩と話しすぎるな、という意味に受け取れる言葉を言われた。細かい表現は覚えていないのだが、仲良くしてはいけないのだ、と思ったことを覚えている。
そのような注意を受けると思っていなかった私はとても驚いた。私の部署はかなりアットホームな雰囲気で、休憩時間だけでなく、仕事中でも余裕があれば男女問わず雑談をしている部署なのだ。上司も同じであり、余裕があれば部下と雑談していた。
だから自分も先輩とは時間に余裕がある時に雑談をしていた。しかし、雑談しすぎて仕事が疎かにならないようにはとても注意していた。仕事はしっかりこなしていたつもりだ。実際、上司から仕事ができてないという注意は受けなかった。
ではなぜ、先輩と仲良くしすぎるなと注意を受けたのか。
どうやら、噂を立てられていたらしい。男女が仲が良いと邪推するのは大人であっても変わらないのだろう。付き合っているのかだのと先輩は他の職員から直接聞かれていたらしい。
かつて上司も同様に噂を立てられ、嫌な思いをしたため、同じ思いをしないよう「仲良くしすぎるな」と私に忠告してくれたとのことだった。
しかし、その忠告はおかしいと私は感じた。
普通は噂を立てた方が咎められるべきなのではないだろうか。ましてや、事実無根の噂だ。私は先輩と付き合ってはいない。しかも、仕事はきちんとやっている。雑談して仕事を疎かにしていたのだったら注意を受けて当然だと思うが、先輩も私もしっかり仕事はこなしている。
上司は昔、同じように噂で嫌な思いをしたのであれば、上司という立場から噂話をしている人に注意するべきなのではないだろうか。
火のないところに煙は立たぬと言うが、男女が仲良く話しているだけで恋愛関係を疑われるのであれば、それは疑った側が火種であるだろう。
私と先輩に注意するということは、噂を立てられる私たちが悪い、と言っているようなものだと思う。
私はこの時、職場は戦場であると思った。事実無根の噂であっても、その言葉一つで周りの態度は変わる。自分を取り巻く環境は一変する。
とはいえ、上司に楯を突いても良いことはない。先輩と相談し、職場では連絡事項以外話さないようにしようと決めたが、これ以降お互いになんとなく気まずくなり、仕事の連絡事項でさえ話しづらくなってしまった。
根も葉もない噂話から先輩との関係値が変化することは癪だった。だから、そんな噂を立てられて嫌だと周りの職員たちに話し、噂は事実ではないと主張した。比較的仲の良い職員にはその話題になった際は事実と異なると否定してもらえるようお願いもした。さらに、その話をした際の反応を見たり、情報収集を行い、噂の発端の人物には目星がついた。
ここまでやる必要はないのかもしれない。だが、職場を自分にとって居心地が良いものにするためには、戦略を立てて行動するべきだと思ったのだ。
ほとぼりが冷めたら、噂について上司にも確認したいと思っている。そして噂を流した犯人にも、その真意を問いただしたいと思っている。
職場は戦場。噂として流れた言葉一つで自分を取り巻く環境が変わるなら、私も自分の言葉で現状を変えてみせようと思う。
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