「私は周りの女の子とは違う」
中学生の頃まではそう思っていました。この「違う」は、いい意味での「違う」です。
かけっこをすればいつも一番だったし、九九の計算も漢字ドリルもクラスメイトの誰よりも早く終わらせられました。学級委員や生徒会長にも推薦されていて、どちらかというと“目立つ”タイプの女の子。だから当時は「自分は人と違う個性や才能がある人間だ」と思っていました。
しかし、高校に進学すると、だんだん一番になれないことが増えてきました。苦手な数学でつまずいて、クラスでも成績は下から数えたほうが早くなる。放送部では県の大会では一番になれても、全国大会に行ってみるとレベルの高さを見せつけられました。どんなに努力をしても、努力だけじゃかなわない相手がいることを知りました。「自分は他の女の子とは違う」と感じていた自分はいつの間にかどこかへ消えていき、大学に進学してからは、「私はごく普通の、平凡な女子大生だ」と感じるようになっていました。
アナウンサー試験で出会った「すごい」人たち
その「人と違う個性や強みがない」という思いは就職活動で、ますます強くなっていきました。実は、私はアナウンサー就活をしていました。合格率1000倍といわれるアナウンサー試験では、とにかく「すごい」人にたくさん出会いました。アナウンサーを目指す人の自己PRはすごい。
「サッカー留学でアルゼンチンに行ってプレーしていました」
「大学生の時に会社を立ち上げました」
「大学のミスコンに出場してグランプリを獲得しました」
他の就活生が生き生きと自己PRをする隣で、私は「この人たちには勝てない。私は特別な才能も経験もない。こんな平凡な奴がアナウンサーを目指すべきではなかった」と心のなかで何かを悟ってしまっていました。
就活は「自分のダメなところを見つける活動」
昔はあれだけ人と「違う」と思っていたのに、きらきらした人の中にいると、どれだけ自分が「平凡」かを突きつけられるようでした。どんどん自信を無くしていき、夢を追い続ける気力もなくなってしまいました。就職活動は「自分のダメなところを見つける活動」。途中まではそう思っていました。
しかし、ある試験で出会った就活生の言葉が私の考えを大きく変えます。
「日本一日差しの強い」宮崎県のテレビ局を受験した時のこと。
「私は見ての通り、肌が真っ黒です。でも、誰よりも肌は強いです。これまで日焼けで赤くなったことも、皮がめくれたこともありません」
「すごいこの子」と思いました。
世間一般でいうアナウンサーのイメージは、色白で華奢な女性。私だったら肌が黒いことはコンプレックスに思って隠すかもしれない。しかしその子は自分にしかない個性ととらえ、強みとして堂々と語っていました。
試験後、帰宅しようとしていたその子に声をかけ、仲良くなりました。話を聞くと、小学校からずっと女子校育ちで、自分だけ肌が黒いことをずっとコンプレックスに思っていたそうです。しかし、体育でプールの授業があった次の日、クラスメイトの多くが肌が赤くなっていたり、皮がめくれてかゆそうにしているのをみて、自分は肌が強くてラッキーだったかもと思ったそうです。その後、保健室の先生に肌が黒い悩みを思い切って相談したところ「肌が黒いのは肌が健康で強い証拠。親に感謝しなさい」と言われて、初めて自分の肌に自信を持てたのだと話してくれました。
この話を聞いて、なるほど!と思いました。
隠すより、打ち明けることで見える強み
コンプレックスだと思って隠すのではなく、思い切って人に打ち明けたり、相談したり、時には人のコンプレックスについて話を聞いてみたり。
そうやって少しずつ視野を広げていくことで、自分以外の人からコンプレックスを強みに変えるヒントを得られるのだなと感じました。
そのあと「平凡」がコンプレックスの私は友達や先輩に悩みを打ち明けたり、他己分析をしたりしてもらいました。そして少しずつ、自分にも個性がある、自己PRできることはあると感じられるようになりました。
こうして無事に就活を終えた今では、就活は「自分の個性を探り、コンプレックスを強みに変える活動」であると感じています。
ペンネーム : Jiriko