kemioの結論「コンプレックスは地球には勝てない」。悟ったきっかけは?
初のエッセイ『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』(KADOKAWA)で注目を集めるYouTuberのkemioさん。底抜けに明るい印象のkemioさんにも、過去にはコンプレックスをめぐる葛藤があったようです。著書の中で「コンプレックスはラッキーアイデンティティ」と位置づけるkemioさんは、なぜそう思えるようになったのでしょうか?
初のエッセイ『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』(KADOKAWA)で注目を集めるYouTuberのkemioさん。底抜けに明るい印象のkemioさんにも、過去にはコンプレックスをめぐる葛藤があったようです。著書の中で「コンプレックスはラッキーアイデンティティ」と位置づけるkemioさんは、なぜそう思えるようになったのでしょうか?
――さっそくですが、kemioさんのコンプレックスってなんですか?
kemioさん(以下kemio): 癖毛、肌の色のトーンが暗い、肌荒れ。小さい悩みなんですけど。毎朝起きるたびに絶望していた時がありました。
特に癖毛ですね。プールの後が一番最悪。プールから上がると海藻が浮き上がるみたいになっていました。それを友達にからかわれるのも嫌でした。
ちょうど、中学生くらいの時は(雑誌)「Men’s egg」の(ギャル男モデルの)梅しゃんが天空の神のような存在。なので、ああいう髪の毛になりたくて、毎朝ヘアアイロンで前髪のばしていました。でも、高校生くらいの時から面倒くさくなって、爆発頭でいくことにしたんです。
――爆発頭でいいや、と思えるようになったきっかけはなんですか?
kemio: あきらめですね。どれだけまっすぐにしても、席に着いたらもう髪の毛戻ってるんだもん。湿気には勝てない。コンプレックスは地球には勝てないんです。地球と第何次大戦かくらいして学びました。
小学生くらいの時って、とても残酷。見ている世界が一生続くと思うじゃないですか。家と学校と(スーパーの)西友を行き来するだけ。だけど、高校生になって行動範囲が広がって、色んな文化に触れる回数や出会う人が増えて、インフルエンス(影響)されていく。自分の頭の中のフィルターが変わっていきました。
kemio: 中2の時に、親友のナディアが転校してきたことも大きかったです。ナディアは黒人のハーフの女の子で、僕が知らないことを何でも知っているように見えました。R&B、コンビニで売っているアルコールの度数、日本には米軍基地があって、タコベルというお店がある……。「かっけぇこいつ」、って思いました。学校内にも、悪そうなことしてブイブイ言わせてる子もいたけど、そういうのは(ケータイ小説の)「恋空」だけにしてくださいって僕は思っていました。知識で戦いに来ていたナディアがかっこよくて、真似ばかりをしていました。
――悩んだ時期を経て、変化したことはありますか?
kemio: 癖毛で悩んでいる時は、癖毛を持っていることだけが悩みだと思っていました。直毛になれば悩みは全部解決なのにって。でも、直毛だからオシャレできない人もいるんですよね。
今の広告は「スリムになろう」っていうものばかりだけど、「やせてるね」が褒め言葉とは限らない。「実は太れなくて」「ガリガリすぎて似合う服がない」という悩みもあるかもしれない。それって、わかんないもんだなあと。自分の世界だけを見て、相手の世界を無視するのはだめだなと思いました。
kemio: コンプレックスだけじゃなくて、大切にしたいものも、人によって違うのかなと思います。
こないだ、友達が恋愛相談をしてくれたんです。「恋愛と夢の間で迷っている」みたいな話。僕のマインド的にキャリアと恋愛だったら、キャリアの優先順位が上なので「恋愛より、今は夢を追いかけるべきなんじゃない?」というようなことを言いました。
その後、この話を名前を伏せて、別の友達に話してみたら「kemioは仕事が最優先だけど、その子は恋愛の優先順位が上だったのかもしれないよ。kemioが“仕事なんてどうでもいいじゃん”って言われたらどう思う?」と言われて、ああそうだな、人それぞれ大切なものは違うんだなって気づけました。
――本の中でも「自分ってブスじゃん」って絶望していた、と書いていましたが、今は容姿を売りにするモデルもされています。苦手なことを、仕事にしようとしたのはなぜですか?
kemio: 僕はかっこいいとかで勝負できない人だと思っていました。アメリカに引っ越して、モデル事務所で顔見せをすると……言葉を選ばずに言うと「白人社会」なのかなーと感じる時が多々あります。細くて、金髪で、ブルー目で。もう、どうやったってそんな風にはなれないわけじゃないですか。だから、「kemioを使いたい」と言ってもらえるところにいこうと、自分のスタイルで行こうと思っています。もちろん時代は多様性を暖かくウェルカムモードガンガンになってきてるとも思います!
――kemioらしさってなんだと思いますか?
kemio: 自分で「kemioらしく」と意識することはないです。第三者から言われて気づくものなのかなと思っています。僕の場合は「よくしゃべるね」って言われて、あーそうなんだ、僕ってよくしゃべるんだ。それがkemioらしさなんだって気づきました。自分らしさはオーガニックなんだと思います。
――kemioさんに憧れて、そうなりたいと思う方も多いのではないでしょうか。そういう方たちに伝えたいことはありますか?
kemio: 僕は(米人気歌手の)レディー・ガガが大好きで憧れています。だけど「レディー・ガガになりたいの?」って聞かれると、そうじゃない、憧れているだけ。だって僕がレディー・ガガ100%になったら、kemioが消えてしまう。僕ができることはガガにもできないだろうから。僕は僕でいたい。だから、みんなも誰かになろうとするんじゃなくて、自分のままでいてほしいな。
1995年、東京生まれ。クリエーターとして、YouTubeやTwitter、Instagramで独自の世界観を発信し続ける。2016年、米ロサンゼルスに生活拠点を移す。モデル・歌手としても活動。今年、初のエッセイ「ウチら棺桶まで永遠のランウェイ」が出版され、発売3ヶ月で15万部のベストセラーとなり世代を超えて話題となっている。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。