「彼氏彼女って何?」

中学生かよ、と思うような質問を、社会人になってから投げかけられた。

私は相手のことが好きだし、二人で過ごす時間が継続的にあった。でもはっきりしてもらえない関係が続いた。好きじゃないならもういっそ構わないでくれと「彼女にしてよ」と問い詰めたら、この質問が飛んできた。

改めて問われてみると、とっさに定義は出てこない。

唯一の恋愛の相手としてお互いに認め合っている関係。好きで大事な存在だと思い思われて、気兼ねなく連絡したり、会えたりできて、ときどきは一緒にお出かけしたり、誕生日や記念日を一緒に過ごしたり。周りの人に恋人同士なんだねって認めてもらう……と私は答えた。

「それが定義なら、いまそうなんじゃない?」
と、彼からは歯切れの悪い言葉が返ってきた。

半分うれしい、けれど釈然としない。もやもやとした何かが腹のなかで蠢いた。彼の彼女になることや、結婚することだけに自分の未来の意味を見ていた、そんな恋愛は結局うまくいかなかった。

私にもあった。名前をつけたくない関係が

こんなことを言いながら、私にも「彼氏彼女って関係にしなきゃだめなの?」と思うタイミングがあった。

自分のことをとても好きでいてくれるひとが現れた。彼と一緒に過ごすと安心したし、楽しかった。けれど、その時は結婚したりするのは難しいと決めつけ、それならば彼氏彼女の関係になる必要もないな、と思った。そして何度も二人で出かけ、事実上恋人のように過ごしながらも、関係にきちんと名前をつけずにいた。

その時私は私のことを好きと言ってくれる彼のことが必要だったし、彼のことが好きという感情もあった。それでも私にとって彼氏彼女の定義に入れられなかった。最初に述べた彼氏彼女の定義も満たしていたのに。あの定義には、足りない部分があると気づいたのだ。

それは、少し遠い未来も一緒に居たいかどうか、だ。

ひるがえって考えれば、「彼氏彼女って何」と尋ねてきた彼も、私のことを好きではあったのだろうなと思う。その時の私は、私の何が足りないのかと悩み、恋愛のTipsを読み漁り、愛されない自分がいやで、苦しんでいたけれど、きっとそういうことじゃない。彼には他にもっと未来を考えたい人がいたのかもしれないし、そもそも誰かと一緒に生きる未来が想像できなかったのかもしれない。

いくら現在地では楽しくても、未来もどうか一緒に居たいと思えるかは少し違う。好き同士なら、一緒に生きる未来を見たいに決まっていると思ってきたけれど、相手やタイミングによって、すれ違ってしまうことはある。そんな時には、相手を責めてもおそらく仕方がなくて、ただそのことを受け止めるしかない。

一方で、相手との関係を「未来を一緒に生きたい」と思えるところまで育てることができれば、恋愛を単なるその時の気持ちの盛り上がりではなく、人生のパートナーといったより強固な関係につなげていくことができるはずだ。

ペンネーム:青葉

新橋のアラサー会社員。人生の研究テーマは「ひとの人生を動かすものは何なのか」。クラリネット、短歌、美味しいご飯をこよなく愛しています。Twitter:@greenery_nkmr

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