私には、フェチがある。私は数年前から年上の、自分よりも頭が良いと感じる男性を好きになるようになった。それだけ言うと普通のことかもしれない。「年上がタイプ」と言う女性は多い。しかし、よく考えると自分よりも立場が上の人ばかりに恋愛感情を抱くのはおかしいのではないだろうか。愛することと、上下関係の中に身を置くことは違うはずである。

ここ数ヶ月は、私がこの自分の恋愛の傾向を否定し、否定しきれず、今でももがき続けているといった、私の20年間の人生の中でも最も価値観が変動した期間だった。

これについて考え始めたきっかけは、半年前に3個上の大学の先輩と付き合い始めたことだ。彼は、私がずっと大学のことや人間関係、セクシャリティーのことを相談していた相手だった。

彼は、当時の私よりもずっと見えにくい権力関係や上下関係、依存などの問題について考えていた人だった。私が彼を好きになり、友達と飲んで泥酔していた時に電話をかけ、「付き合いたい」と言ったところからスタートした。

彼と2ヶ月ほど過ごす中で、どんどん彼に依存していった。泥酔しては電話をかけ、呼び出し、私の家で一緒に過ごす。何をするわけでもなく、一緒にダラダラする。仮面浪人の末に大学を代わり、そこに全く馴染めていなかった私にとって、彼は唯一安心できる存在だった。彼の言うことは間違いがないと思っていたし、絶対的な信頼を置いていた。

そんな彼に、唐突に振られた。彼にとっては唐突ではなく、ずっと考えてきたことの結果だったらしい。

「僕と君の間には上下関係があって、今のままではより対等な関係を目指すことはできないと思う。距離を置きたい」

当時の私は彼が何を言っているか全く理解ができず、いきなりおもちゃを奪われた子供のように荒れに荒れた。泥酔して彼に電話し、詰ったりもした。

彼のことを諦められなかった私は、自分と彼との関係、上下関係や依存についていっぱい考えた。本を読んだりもした。でも、ちゃんとわからない。
その頃、メンタルが荒れていた私を救ってくれたのは、もう1人の男性だった。彼は、その時私が振られた「元カレ」よりもより上下関係が強い相手で、私の高校時代の家庭教師でもあった。私とは年齢もずいぶん離れていた。

彼との関係の始まり方も最悪で、泥酔していた時に合意がきちんと取られないまま性的な関係を持ったことだった。しかし、彼に精神的に頼りきっていた私は、そのことをちゃんと認識することもなく、彼との関係にはまっていった。泥酔しては電話をかける。同じことの繰り返しだ。

でも、彼と今後私たちがどのような関係を築くかの話し合いをしていた時に、ふと気が付いたことがある。そのような場のコミュニケーションの主導権を持つのはいつも彼であり、私の考えは全く相手に伝えることができていない。そもそも、自分の中で彼が正しいという認識があったため、自分の意見もほとんど持つことができていない状況だった。

それに気がつくと、初めて性的関係を持った時のことも気になるようになった。私は自分も望んでいたことだと思い込もうとしていたため、忘れかけていたが、本当は嫌だった。その後ショックで数日間寝込むほどに。本当はそれについてだって、きちんと伝えられるべきだろう。

「下」に見られることに快感を抱いている…?

この時、元彼があんなに気にしていた上下関係の何が問題なのかがやっと理解できた。自分よりも立場が上の人に、「下」にみられることに合意し、快感すら抱いている。それが恐ろしくなって、上下関係に嫌悪感を感じるようになり、対等な関係を築くことができる相手のみと関わろうと決めた。悩んだ末の決断だったが、元教師の彼とは完全に連絡を経った。自分で決めて、もうあなたとは連絡を取らない、と伝えることができた。

でも、私は本当に上下関係が嫌だと心のそこから思っているのだろうかと今でも思う。結局はこれも、未だに私にとって大きな存在である元彼に好かれるためのパフォーマンスなんじゃないか。だとしたら、「上」の立場の人から言われるがままに上下関係を嫌っていることになる。その場合、本当に私が最も求めているのは、上下関係そのものだとすら言えるのではないか。

もしそうでなかったとしても、対等な関係ってなんだろう。どうやったら目指せるのだろうか。

そう考え、絶望して、上下関係についてなど考えるのをやめようと思ったこともあった。それなのに、マウントを取り合う、年上の男の子の集団に入って「かわいい年下」を演じようとしてしまう。でもそこでも馴染めない。怖い。結局私の心のそこにある欲望はなんなんだろう。わからない。

相手に幸せになってほしい。自分が幸せになりたい。一緒に幸せになりたい。

そのような恋愛を今後私はすることができるのか。それを本当に欲しているのか。まだ答えは出ていないが、少しずつ自分と向き合っていきたい。

ペンネーム:ゆか

都内の大学生。食べている時が一番幸せ。海外から帰国して、日本に適応できていないらしい。

Twitter:@YukaOkamura1