舐められることと親しみやすいことは似て非なる事だと思う。
私はどちらかと言うと舐められやすい方だ。
バイトで入っている塾講で、初対面の中2の女の子に「先生めっちゃカワイイっすね」と食い気味に言われた。
初っぱなから容姿ジャッジ。
でもこんなこと、初めてじゃない。
この職種じゃなくてもバイトで初めて会って、いきなり顔について言及されることは何度かあった。
私は自分の容姿が好きで、自分でも可愛いと思って気に入っているけれど、でもそれでもそれが求められない仕事で来ていて、それなのに容姿についてどうこう品定めして言われたら、気分が良くない。
容姿ジャッジされて不快だし失礼だと思うが、対応の仕方がわからない
人の見た目について、貶すのは良くないと周知されていても、褒めるのは「褒めてるんだからありがたく受け取ればいいじゃないか」となあなあで片付けられる気がする。
私も、軽率に容姿ジャッジされて不快だし失礼だと思うのに、それへの対応の仕方がわからない。
さっきの塾で出会った女の子にも何故か瞬発的に「ありがとう~」と返してしまった自分がいたし、他のときもそうだった。
社交辞令的な笑顔でお礼。なんで。
そういえば、私が小学生の頃くらいは褒められたら「ありがとう」は画期的だった気がする。とりあえず謙遜するのが美徳みたいな感じだったから。
そんな中、私は謙遜して自分を否定したくなかったから、にっこり顔で「ありがとう」を繰り返した。
可愛いね。「ありがとう」
絵がうまいね「ありがとう~」
女子力高いね「ありがとう」……
その、なごりかも知れない。
可愛いねって、男ウケするねだと思ってた
そもそもなんで昔は容姿ジャッジOKだったのに今はダメなのかというと、きっかけは性被害に遭ってフェミニズムと出会ったことだった。
その前はたとえ嫌でも気付かぬふりをしていて、可愛い→男ウケ→価値があるみたいな価値観に迎合していて、だから素直に褒められても嬉しいと思えたんだ。
でも、事態は変わる。
たとえ同性の女の子からの発言だったとしても「可愛いねって」言われると拒否反応を示したし、自分が嫌でたまらなくなった。
可愛いね=男ウケするねって、搾取しやすそうだね、でしょ。それで性暴力につながるんでしょ。そう考えたらもう止められなかった。
可愛い見た目の自分が自分でも好きだったのに、可愛いと言われるこの容姿が嫌になって、リビングのペン立てに刺さっていた鋏を取り出して、風呂場の鏡の前に立って、胸くらいまであった髪をざくざく切り落とした。
後日安い1000円カットみたいな美容院で「性別無い感じにしてください」と言ってショートに整えてもらった。初めてバリカンで刈られた。
その後も髪が伸びる度に鏡の中の自分に拒否感を覚えて、ずっとしばらくショートだった。
でも。
鏡の前に立つ。自分と目が合う。最近同居する父に「ショートより長い方が似合うよ」と言われて「うるせぇ」と返したばかりだった。
美容師との相性が悪かったのかなんなのか、癪に障るくらいショートはしっくり来なかった。逆にキュートに纏めたいなら、今くらいの肩につき始めた髪の毛の方が良い。
私を変えようとしていたけど、社会も変えないと。
可愛い自分が好きだ。
くっきりした大きな一重も意志の強そうな太眉も、薄くて形の良い唇も白い肌も、血色の良さも。全部ひっくるめて、自分の見た目が好き。
自分が好きなことと、周りからのジャッジは何も関係がないと思った。
髪をバッサリ切ったのは、周りにどう見えるかを変えるために自分の見た目を変えようとしたから。だけど、そんなことをしてたら本末転倒だ。
私は変わらない、社会が変わるんだ。
舐められることと親しみやすいことは似て非なる事だと思う。
失礼な人はどこにでもいるので、初対面から舐めてかかられることはきっとあるだろう。
でも、舐めたままにはさせない。毅然と対応しよう。