好きな俳優を列挙したら、「あんたって意外と面食いだよね」と言われた。
ちょっと待て。心の中ではくわっと目を見開いた修羅の顔になったけれど、わたしはやんわりと否定した。
「やだなぁ、そんなことないよ」
顔が好きで何が悪いと言えなかったのはなんでだろう。ひとりになって悶々とした。
「〇〇が好き」「へぇ、そういう顔の男の人が好きなんだ」。これへの最適解を探して幾星霜。最初は顔以外の良さを全力プレゼンしていたけれど、そよ風ほどもなびいてくれないので色々と悩んだ。なんで「好きな芸能人の顔のタイプ」を、「異性として好きな顔」に広げちゃうんでしょうね。それが純粋に疑問だった。
わたしは顔の系統なんか考えたこともないし、そもそも愛とか恋、性的な何かを受け付けないので、「恋愛対象の顔」と言われるのは気持ち悪くて仕方なかった。もっとミクロな視点で物を見て、お願いだから。だからわたしは、最初に布石を打つようになった。
「〇〇の文章力がめっちゃ好き。ブログが芸能人のものとは思えないぐらい面白い」。これでどうだ、ターンエンド! ここで相手のターン。初手でいきなり「へぇ、そんなに好きなんだ。写真見せてよ」。そして繰り返す冒頭のセリフ。写真よりブログを見てくれよ。現場からは以上です。
面食いって、私だけじゃないよね?恋しない理由を勝手に決めないで
「面食い」の話に戻ろう。
そもそも事務所に所属して、芸能人として日の目を見ているお兄さんたちは、基本的に日本人の上位数パーセントのイケてるメンズばっかりなわけで。それをわざわざあげつらって「面食い」では、ほとんどの人間に跳ね返る特大ブーメランである。一億総面食い。これはこれで悪くないのかもしれない。
でも、ここでのしかかる、顔のタイプのお話だ。彼氏なし、好きな人なし、面食いという状況は少々重い。わたしには恋ができない、したくない理由が頑として存在するのに、「面食いで高望みしてるから彼氏がいない」と言われるのはなぜだ。そこまで身の程知らずじゃねぇよ。だから「好きな芸能人の顔」を「異性として好きな顔」と切り離して欲しかったし、それができないなら面食いの方を否定するしかなかった。
「誰かの好きなもの」を無理やり恋愛に結び付けてほしくない
無性生殖ができない種族に生まれた。きっと前世は、人間に転生ジャンプアップできるぐらい徳の高いゾウリムシあたりだと思う。人間は子孫を残すために異性が必要で、そのために恋をする。そこに難癖をつけるつもりはない。
でも、「誰かの好きなもの」を、無理やり恋愛に結びつけるのはちょっとやりすぎだと思うのだ。悪気がないのはわかっているから、ほんの少しだけ考えてみて欲しい。自分の恋愛要素と無関係だから推せているのであって、あたかもわたしの理想の彼氏像みたいなことを言われてしまうと、どうにも気持ち悪くなってしまうのだ。言い方は悪いかもしれないけれど、こういう人間もいることを知って欲しい。
いい答えはまだ出ないけど、今は好きなものを好きだと胸を張りたい
そんなこんなで息苦しくはあるけれど、無理のない範囲で一生懸命推している。顔で選んだっていいじゃないか。そこにあるのは単純に、美しいものを美しいと思う、まっさらな感情だけなんだから。邪推の余地なんてこれっぽっちも残っちゃいないのだ。
次に「面食いだね」と言われたら、何て返そう。「悪い?」じゃ攻撃的すぎるし、かといって否定もしたくない。自分の事情をわざわざ詳らかに説明するのも無粋だと思う。でも、まぁ、いいか。すぐに答えが出るものでもないのだから。もやもやし続けて、考え続ければいつか見つかる。だから今はこれでいい。
あぁ、今日も推しが尊い。