一番好きだった人は誰かと聞かれたら、間違いなくOだと答えるだろう。
一度だけ過去に戻れるとしたらいつかと聞かれたら、間違いなくあのメールをもらった瞬間だと答えるだろう。

世界で一番、好きだった。純愛というものがあるとすれば、まさにそれだった。

何がいいのか答えられないけれど、どうしようもなく好きだった

中学生の時に、どうしようもなく好きな人がいた。
顔がめちゃくちゃかっこいいわけではないし、勉強もできるわけではない。スポーツはちょっとだけできた。
ただ、ひたすらに。何がいいのかと聞かれて答えられないけれど。好きだった。

前世で魂が一つだった男女が、この世に生まれてくるときに二つに分かれる、そしてその相手とは身体も心もぴたりと相性がいい。そんな相手のことを、“ベター・ハーフ”というらしい。
私とOは中学生から高校生の時に仲がよかったので、身体を重ねたことはなかったけれど、もしきっと重ねたならばぴったりと重なっていたのだと思う。だって、手をつないだだけで、あんなに幸せになったんだもの。

高校は別々になったけど、定期的に遊んでいた。特に、恋人同士になることはなかったし、なりたいとも思わなかった。

彼女がいようがいまいが、私はOの特別だと信じて疑わなかった。
その証拠に、彼女といても私と遊んでくれたでしょう。他の女とは遊ばないくせに。

彼女なんて、そんな一過性の女と同じ土俵に上げないで。
ずっと変わらない。これまでも、これからも。
そう思っていたけれど。

あの時交わしたメッセージ、本当はOなりの告白だったの…?

ある日、Oとメールをしていた時に、ふと彼氏や彼女の話になった。「どんな男がタイプなの?」そんな言葉に、私は「んー、優しい人かな」と適当に答える。

特に彼氏が必要だと感じたことはなかった。別に彼氏がいなくても楽しかったし、ましてや彼氏が「俺以外の男と遊ばないで」なんて言われて、Oと遊べなくなることの方が問題だった。
しかし、Oと付き合いたいとは思わなかった。私は妙に現実的だったので、高校生から付き合って、大人になって結婚する人がいかに少ないかを知っていた。一方で、どこかでOが運命の人と信じて疑わないくらいには夢見ていた。
だから、今付き合うなんてもっての他だし、万一別れでもして気まずくなったら、一生後悔する。
結婚するか、一生親友か。その二択以外あり得なかった。

なのに、「Oってどんな人がタイプなの?」その問いに「可愛い人かな」そう返事がくる。
「へえ、たしかに」。私はキレイ系か可愛い系の二択ならばキレイ系だ。
自分が、まだ今は恋愛対象になっていないことに安堵していたが「りあは可愛いよ」と返事がきた。あれ、これはまずい流れじゃないか。

さすがに鈍い私も「もしや?」と思った。そして、もういっそのこと付き合おうかと思った。間違いなく、世界で一番好きだったから。

でも。こんなに大切な人と、今付き合って別れたら?どうしたらいいの?

「Oの横には、小さくて可愛い子がいるイメージだな」そう返事をする。
「その子が、りあだったりするかもよ?」と返信が来た時、泣いてしまった。悔し泣きはよくするけれど、どうしたらいいかわからなくて泣いたのは人生で初めてだった。

大切で、大切で、大切で。だからこそ、この一瞬の喜びを取ることはできない。
ごめんね、O。大好きだよ。

私は「えー、全然イメージつかないんだけど。そういえばさ、次みんなでカラオケ行きたいな」と返信し、それから話はそれていった。きっとOは、全部わかっていたと思う。

O結婚するんだね。おめでとう、幸せになってね…。

「俺、今月結婚するわ」と、一通のLINEが届いた。
久しぶりのLINEだった。私が東京に来てから、しばらく連絡を取っていないので丸2年くらい経つだろうか。

Oとは、あの出来事の後、疎遠になっていった。特にその出来事が原因というわけではなく、進学校に行った私と、高校を卒業した後ほとんどの人が就職する学校に行ったOの環境の違いだった。

一番それを感じたのは、私がセンター試験3日前の日に「遊ぼう!」と連絡が来て、「センター3日後なの」と返事をすると、「りあは頭がいいから大丈夫でしょ」と返信が来た時に、ああ、わかり合えないところができてしまったのだと痛感した。

そこから、大学生になって地元を離れた私と、地元で就職したOは、地元に帰った時に遊んでいたが、頻繁に連絡しなくなっていった。

こんなに疎遠になるなら、一度だけ、彼女になってみたかったな。今更後悔しても遅いけどね。
きっと、運命じゃなかったんだね。私の“ベター・ハーフ”は、まだきっと見つかってない。頑張って探そう。

結婚、おめでとう。
幸せになってね。