あの日、食べられないことがこんなにも怖いことだと初めて知った。

私は以前シフト制の職場で働いてた。早番、普通、遅番、夜勤というシフトだった。特に夜勤は、夕食を食べる時間も、寝る時間も体のバランスが崩れるものだった。この夜勤は平均して月に5回ほどあった。

私は夜勤が嫌いだった。夜勤は限られた人数で、かなりの仕事量だった。もちろん当たり前のように人が寝ている時間に働くので、睡魔との戦いもある。夜勤が1度でも入ると生活リズムが崩れ、肌の調子も悪い。夜勤明けの翌日は必ず休みだったが、通常の生活リズムに戻すのに私はかなり時間がかかった。

とにかく嫌いだった夜勤で唯一の楽しみは食事だった。夜勤担当の業務をある程度こなしてからの夕食なので、大体22時か22時半。のんびり食べる時間もなかったけど、唯一ほっとするそんな時間だった。

「食べる」という当たり前のことができなくなったあの日

とある夜勤の日。いつも通り出勤して、いつも通りの業務をこなす。
その日の夜勤も22時頃に食事をした。この日は自分で作ったトマトリゾット。このリゾットを楽しみに夜勤を頑張っていた。

しかし、一口食べた後、突然吐気、胃痛、腹痛に襲われた。変な汗も止まらない。慌ててトイレへ駆け込み嘔吐した。暫くしてやっと吐気が治り業務へと戻った。せっかく作ってきたリゾットも見るだけで吐気がするので、この日の夜勤は食事をとるのをやめた。水分摂取ですらしんどく、吐気の度にトイレへ行き、なんとか翌朝までの勤務をこなしたのである。

夜勤が終わった後は、なんとか家に帰った。仕事が終わった安心感からか、それまでなんとか耐えていた痛みが一気に溢れ出す。これまでの人生で感じたことのない激痛。
食事も水分も受け付けない。食べられないことなんて人生で一度も経験したことがなかった私は、大袈裟かもしれないけど、もしかしてこのまま死ぬのかな…そんなことさえ頭をよぎった。

過度のストレスが食べることを私から奪った

その日は、救急で病院へ行き、点滴をした。結局、虫垂炎(盲腸)ということが判明した。
医者からは「最近何かストレスとかありましたか?」と質問された。
ストレス。その一言で原因はすぐ分かった。当時の私は、職場内の争いに巻き込まれて、何故か私が標的にされていた。先輩や同期から無視され続け、1ヶ月近く経っていた。意地汚いLINEやあからさまな仕事での無視。私はただただ仕事がしたいだけなのに。

そのうち、どうにかなる。何をされても言い返しもせず、ただ耐え続けていた私は、自分でも気付かないうちに、そのストレスが体を蝕んでいたようである。
手術はせず、通院をして点滴という治療方法となった。仕事もしばらく休み、1週間近く食事をすることもできず、殆ど寝たっきり。
食べられないことがこんなにも辛いのかと身にしみて感じた。

1週間ほどして、久しぶりに口にした食事は素うどん。ただの素うどんなのに美味しくて美味しくて涙が出た。ああ、食べられることは、こんなにも幸せなんだと。
それから徐々に食事量を増やしていき、体力も気力も回復していった。

食べられることのありがたさを教えてもらった

それまでの私は自分の体をいたわらず、無理し続けていた。きっと大丈夫。今までも大丈夫だったんだからと、根拠のない自信。元々体は強い方ではなかったが、一度決めたことは絶対に最後までやり遂げる性格で、悪く言えばとてつもなく頑固なため、意地を張っていたようである。

職場内の嫌がらせは今でも思い出すだけで、涙が出てくるほどのトラウマではあるが、食べられることのありがたさ、自分の体を大事にすることの大切さを教えてもらった。
私はこれから先、自分のことを後回しにせず、いたわって生きていくのだ。