あの時の経験が、今の私を作っているような気がする。

17歳の夏、私は初めてアメリカを訪れた。行き先はテキサス。

初めてのアメリカ旅行、空港で起こった「乗り換え」の出来事

成田空港を出て、無事にアメリカの空港に到着。ここまでは順調だった。
問題が起きたのは乗り換えの時だった。荷物検査が長蛇の列でなかなか進まない。チケットの時間を見ながら焦る気持ち。英語も上手く話せなかったし、焦る気持ちから余計に空港のアナウンスが聞き取れなかった。荷物検査が済んで、チケットに記載されているターミナルを探したが見つからない。困ったので空港スタッフに聞いたら、空港内のバスでターミナルを移動しなければならないうえに、私が乗る予定の飛行機は既に出発しているということを知らされた。頭が真っ白になった。

言葉が上手く通じない。「飛行機に乗れるかな?」「お金どうしよう?」と考えていたら、涙がボロボロあふれ出した。そんな私を見て、バス乗り場にいた別の空港スタッフが声をかけてきた。彼女は私のチケットを見て状況を理解したのか、そっと隣に座り私の背中をさすってくれた。そしてバスが来るまでの間、歌を歌ってくれた。歌の意味は全くわからなかったけど、おかげで少し落ち着いた。

ターミナルを移動してから、約小一時間。席に空きがあると連絡を受けた。空港スタッフは、ゆっくりとした口調でわざわざ日本語で伝えてくれた。それがとても嬉しかった。自分が理解できる言語を聞けたことで安心できた。言葉って不思議だ。無事に飛行機に乗れて、ほっとしたのか涙目になった。客室乗務員さんは気にして、オレンジジュースを出してくれた。普通のオレンジジュースだけど、とてもおいしく感じた。

初めてのアメリカ旅行は、私に「何とかなる精神」を与えてくれた

やっと始まったアメリカでの生活は驚きの連続だった。知らない人なのにみんなフレンドリーに話しかけてくるし、一番小さいサイズの飲み物を頼んだはずなのに、日本のLサイズくらいはあった。食事のボリュームにも驚いた。

二週間程の滞在だったが、充実した日々を過ごせた。アメリカ滞在中の思い出もたくさんあるが、結局一番印象に残っているのは空港で過ごした数時間の出来事。
あの時の経験を経て、一人で何かをすることに対する抵抗感がなくなり、出来ることが増えた。同時に言葉の大切さも痛感し、語学に対する興味が増した。“何とかなる精神”もついたような気がしたし、少し逞しくなれたとも思う。

大人になった今でも、17歳の夏の経験が背中を押してくれている

現在、私は仕事の関係で海外で一人暮らしをしている。
一人暮らし自体も初めてだが、不思議と怖い気持ちはない。

17歳のあの夏の経験が背中を押してくれている。そんな気がするから。