就職した会社が解散。今働けているのは、偶然と運のおかげかも

5年前の私は絶望の中、ソーセージを食べていた。
「この先の人生どうしよう」
「会社解散になるしなあ」
「仕事無かったら家賃払っていけないよ」
田舎を出て専門学校に進学し、無事に就職できた京都のデザイン事務所でグラフィックデザイナーとして働いていた私は、
昨日の社長の「この会社はあと1ヶ月で解散する」の言葉で一気に展開が変わってしまった。
そんなことあるぅぅぅうう?!って思ったが、
そんなこともあるらしい・・・。
悲しむ暇もなく次の就職先を探し始めた私は、憧れているデザイン事務所を片っ端から調べ、
良いなと思ったデザイナーさんが開催しているイベントに翌日参加したのだった。
あわよくば繋がりを作って就職に結びついたら・・・
なんて下心は儚く散って、デザイナーさんとろくに話す事もできず、
イベント終了後に会場横の飲食店で空腹を満たすために適当にソーセージを頼んだのだった。
私がデザイナーを目指したきっかけは、小さいことから絵を描くのが好きだったからだ。
専門学校での評価は良い方だったし、完全に自分に向いている職業だと思っていた。
しかし、就職してからはそれが“うぬぼれ”だということに気づいた。
「あなたはデザイナーに向いていない」
職場で突きつけられた現実は私にとってはとてもつらかった。
今まで表現することが好きでたまらなかったのに、
いつしか何かを作り出すことが怖くなり、自分が作るものに自信を持てなくなった。
なんでもっとセンスよく作れないんだろう。
何をやっても足を引っ張ってしまうし、やっぱり向いてないのかな。
悶々とする毎日の中で上司から注意を受けては萎縮し、
また失敗を繰り返してしまう自分の不甲斐なさに悔しさがこみ上げる日々だった。
それでも2年は続けようと決心した矢先の、勤務して1年が経ったころに、
あの解散宣言があったのだった。
そんなこんなで崖っぷちに立たされ、
肩を落としながらイベント終わりにむしゃむしゃと食べていた私に、一人の男性が声をかけてくれた。
「ねぇ、君さっきのイベントに参加してた子やんな。
今からデザイナーさんたちと二次会に行くけど、良かったら一緒に行く?」
神様が私にチャンスをくれた。
私が尊敬しているデザイナーさんと飲める機会を、断る理由もなく参加した。
とても楽しい会だった。今の私の状況も伝え、皆心配してくれ、隣に座っていたディレクターさんが
「3ヶ月間だけでもよかったらうちでバイト募集してるからよかったらおいで」
と言ってくれたのだった。
私はそのご好意に甘え、とりあえずその制作会社で働くことにした。
そこでのアルバイトは新しい発見の毎日で、
会社を辞めて不安定な先行きだということを忘れるほど自分自身が生き生きしていた。
とはいえ、バイト期間が終了したらどうしようか、決めなければならない。
だから私は必死に自分の作品集をいろいろな人に見てもらっては可能性を探っていた。
しかし返ってきた反応はどれも私のデザイナーとしての素質を評価するものではなかった。
完全に自信を失った頃、バイト先でたまたま東京のフリーランスのデザイナーさんに出会った。
名刺交換をした数日後、その人から1本の連絡が入った。
「自分の仕事が忙しすぎるから誰か知り合いのデザイナーを紹介してほしい」との内容だったけれど、周りに紹介する人はおらず「私でよければ空いています」というような返信をした。
そしたらとりあえず面接することになり、無事に採用され、1ヶ月後には東京に引っ越したのだった。
今思えばこんなにもとんとん拍子で物事が進むなんてほんとにすごい。
私の急な東京行きを親は反対したけれど、私がデザイナーとして「手を動かしていい」という人が現れたことがうれしくて、この恩を全力で返したいと思った。
あれから5年。今も同じ職場で働いている。
死ぬほど忙しかった分、手を動かして沢山学び、確実にスキルが伸びて成長できた。
今は法人化してメンバーも増えて、やりたかった仕事ができている。
もう今の私に「あなたはデザイナーは向いていない」という人はいない。
私はたまたまラッキーで、デザイナーになれてしまった。
スキルも経験も無くても人運だけで。こんなこともあるらしい。
この経験から「心ない他人の一言は幻想にすぎない」ということがよく分かった。
だから、あなたの人生を決める権利を他人に譲ってはいけない。
自分の可能性を自分が信じられなくなる経験を他の人にもしてほしくないし、誰よりも自分のことを信じてほしい。大丈夫!不安があるだろうけどあなたはきっとできるよ。
その選択肢を肯定できるようにどんどん行動していこう。
そしてチャンスがあったら飛び込んでいこう。
疲れたらひと休みしておいしいものを食べよう。それであなたの人生が変わるかもしれないから。
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