出席者紹介

かえ:25歳、会社員。インスタをフォロワー1200人まで増やした。
ゆうか:29歳、主婦。中学生くらいからずっとSNSにふれている。
てん:22歳、会社員。人とつながるのが怖いので主に見る専門。
みのり:21歳、大学生。趣味によって複数のアカウントを使い分け。
安田: 28歳、フリーライター。自分の書いた記事の紹介などに使用。
咲月:20歳、通信大学生。高校生のころはSNSの更新に必死だった。
田中洋美さん:SNSで日常や社会がどう変化したかを研究中。明治大学の准教授(「ジェンダーとメディア」など)

どのアプリを使う? 

田中さん:どんなアプリやサービスをどのように使っていますか。

ゆうか:他人からよく見られたいと思いでインスタを使っていました。最近はうまい距離感を保とうとしている。ツイッターは見る専用で使います。

かえ:インスタはアカウントを三つ持っています。友達とだけつながってるもの、コスメを見る専用、フォロワーを増やすめにがんばっていたアカウントに分けて使っています。

みのり:インスタは、24時間で投稿が消えるストーリーズ機能が気楽。知り合いからは、ご飯と演劇サークルの話しかのっけてないね、といわれました。

安田:自分のとった写真を記録のように載せるやり方でインスタを使っています。

てん:メインはツイッター。大学の友人と使ってたものがあったけど、社会人になるタイミングで使うのをやめました。投稿はしていません。あと、他の人の投稿を見て自分と比較して劣等感を覚えることがあったので、あまり得意ではありません。

咲月:noteやツイッターがメイン。インスタもあるけど、あまり他人に興味が無くて。なんとなく見ていて、すごく時間を無駄にしてるな、と思うようになって使わなくなった。

私も素敵なものを発信しないと、というプレッシャー

田中さん:昔はマスメディアが「素敵なもの」を見せる役割でした。いまは一般の人もコンテンツを作って共有できるようになりました。「私も作らなきゃ」「投稿しなきゃ」というプレッシャーがあるのかな、と感じています。みなさん、どうですか。

ゆうか:SNSは「自慢大会」のように感じることがあります。私は容姿に自信が無く、美味しいものを食べた、いい場所にいった、ということが、みんなと横に並べる題材でした。なので、食べ物や旅行先ばかり載せていますね。気にしてるつもりじゃなくても、友達が何してるか、に興味があって、憧れも覚える。

かえ:友達の投稿を見て、自分はなんて地味な休日過ごしてるんだろう、自分の人生はなんてしょうもないんだろう、て思っちゃう。

キラキラインスタグラマーに憧れて、一念発起したことがありました。グルメの紹介に分野を絞って、フォロワーを1200人くらいまで増やした。本を読んで、相手の得になるように、とか、自分からいいねをする、を実践しました。投稿すると何百いいねがすぐについて、コメントもきて、達成感や喜びもあった。

キラキラインスタグラマーの世界を知ることができて、自分の中の熱が落ち着いた。いまは月に2、3回投稿する程度ですね 。

安田:ツイッターは仕事用、ライターとして書いた記事を載せるために使ってる。いいねがたくさんつく記事を書かないと、てプレッシャーや責任感があった。

てん:ジャニーズのアイドルを追うために使っています。でも人によって、自分の思いを絵で書く人、魅力を的確に少ない文字数で表現する人がいて。自分も同じように表現したいのに、できないと劣等感を覚えた。

咲月:私はみなさんと少し違うかな。時間と労力使って何になるんだろう、て考えてインスタは使わなくなりました。

いまはnoteにエッセイ載せています。これは自分がやりたいことなので、充実しています。他人に向けて作った理想像のためにSNSをやるのは心の健康によくないのかな、と感じている。

みのり:SNSを通して劣等感を抱いたことはなかったです。複数のアカウントを趣味ごとに使い分けている。ジャニーズで好きなアイドルがいたけど、一緒に盛り上がれる人がリアルの教室にいなくて。ツイッターなら、ファンのコミュニティでつながれば話が伝わって楽。自分の好きなものを好き、ていえる場所は精神衛生上いい。所属するコミュニティを増やす感覚。

田中さん:みなさんのエッセイにもありましたが、メンタルによくないと思いつつ、やめられないというところがあるのかもしれませんね。

ゆうか:私は友達の投稿をさかのぼってみちゃうタイプ。昔の友達の行動や好きなことに、私は興味がある。こういう時代だからこそ、もう会うことのないような人の近況を知れてしまう。

かえ:私はリアルな友達よりも、美容とかファッションに特化したアカウントを見て、へこむことがすごく多かった。自分が一度、挑戦してみて、キラキラする投稿をする人は、仕事レベルでやっていて、苦労があるだろうな、て俯瞰して見れるようになった。生活の一部になっていて、自分の生活の普通さに落ち込むこともあるけど、やめることはないだろうな、て思います。 

頼りすぎず、気まぐれに使ってやりたい

田中さん:大学で実施したアンケートでも、女性の回答者の多くがSNSで劣等感やコンプレックスを抱くことがあるようでした。不必要に傷つかないでいい世界になれば、と思います。最後に今後、どういう風にSNSがある生活を送っていきたいか教えていただけますか。

 咲月:最近、ツイキャスでおしゃべりする楽しさを発見しました。誰かの憧れのためではなく、自分が好きなことを世の中に発信するやり方として使えば楽しめるかな、と考えています。

 安田:今日の座談会で、自分だけではなく、多くの人が色んなことと葛藤したり、苦しんでるとわかって、自分の中の気持ちの整理がついた。

 てん:劣等感の話をたくさんしましたけど、自分を認める、ありのままの自分を愛する、という考え方に出会えたのもSNSのお陰かな。自分が傷つかない使い方、自分を好きになったり、よりよくしていくツールとして使いたい。

 かえ:私がSNSで見るのは、自分が現実で関わることのない人たち。自分と比べることにひっぱられないで、情報収集の手段として便利に使っていきたい。

 みのり:好きなものを選び取るのはSNSの利点。その分、世界が狭くなっちゃうところもある。
以前はしたたかにSNSを利用していこうという考えだったけど、いまは頼りすぎないで気まぐれに使ってやりたいぞ、と思います。

 ゆうか:友人のSNSを見ているだけだと、狭い世界にいるな、という気づきありました。他の方のように、情報収集で楽しむという手もありだし、劣等感もそんなに感じなくていいのかな、と思えました。

●田中洋美准教授プロフィール

明治大学情報コミュニケーション学部教員。専門は社会学、ジェンダースタディーズ。現在はソーシャルメディア、AIについて研究。主な著書・訳書は「ボディ・スタディーズ―性、人種、階級、エイジング、健康/病の身体学への招待」(晃洋書房)など。 研究室:https://hiromitanaka.net