誰かにかけられた呪いを解くために、自分で自分に魔法をかける

2020/09/01

「美人は3日で飽きる」と常々言われているけれど、私はできることならそのレベルの美人になりたかった。

顔の整い方よりも、足が速い、スポーツができることで評価されていた小学生の頃は、自分の顔に対して何ら関心を抱いたことはなかった。
中学・高校は女子校で過ごし、異性の反応で自分の「価値」をはかることはなく、のびのびと過ごしてしまった。

そう、「過ごしてしまった」のである。

嬉々として共学に入学した私は、自分の「価値」を痛いほど思い知った。
かっこいい先輩につられて入ったサークルには、脳内のアップデートが小学生で止まっている男子が大勢いた。
その男子たちは、程なくして打ち解けた私を「ブスと言っていい存在」と認定した。

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「ブス」扱いされて地に落ちた自己肯定感

一人が「ブス」と言い始めれば、他の猿たちもそれに乗ることとなる。
飲み会では、「おいブス」「お前ブスなんだから」と当たり前のようにブスと連呼され、
一方で悲しい顔をすれば「冗談じゃん」「本当のブスにはブスなんて言えない」と言い訳を始める。

愛情をたっぷり注がれて育った私を待ち受けていたのは、自分が「ブス」であるという評価であった。
高校生の頃にはメイクを始め、もちろん大学にはメイクもしていた。
洋服にもそれなりに気を遣って、はたから見てもきちんと年相応には見えていたはずである。

高校生の頃は女子校ながらも恋愛はしてきたし、通っていた予備校で告白されたこともある。
一定の人にはよく思われてきたはずなのに、大学に入ったら当たり前に「ブス」と言われる。

それほど高くなかった自己肯定感が、地の底まで落ちていった。

メイクをしないと外に出られず、美容整形のホームページを眺める日々

それからの私は、相も変わらずサークルには顔を出していたけど（「ブス」という男子は同学年の一部だった）、メイクをしないと外へは出れず、夜は美容整形のホームページと睨めっこしていた。

メイクをして外へ出ても、ふと映る自分の姿に泣きたくなるし、アイプチで頑張って二重にしていた瞼は、お酒を飲んだら元に戻ってしまう。低い鼻に塗ったノーズシャドウは汗で崩れ、メイクがうまくなればなるほど、すっぴんは見せられなくなる。

どこを整形すれば「かわいく」なれるのだろう。
毎日そればかり考えていた。
友達と会っても好きな人と話してても、「どこか変じゃないかな、アイプチ取れかけてないかな」とそればかり気にしてしまう。

どうしても自信を持ちたくて誰にも言わずに鼻と目を整形

私が最初にしたのは鼻へのヒアルロン酸注入である。
鼻根にヒアルロン酸を注入し、バランスを考え、残りは顎に入れてEラインを整えた。

普通の注射でも怖いのに、手術台に乗り、鼻根に注射を刺す。
何回も頭でイメージしていたはずなのに、実際に手術台に乗った時、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

注入後は、友達にも気づかれないし、微々たる変化だとは自覚していたが、少しでも「かわいい」に近づけた気がして、武器を装備したような、そんな気持ちになった。

それでも、まだアイプチは嫌だったし、次は埋没法という手術方法で二重にすると決めていた。
もともと恐怖心が人一倍強い私が、それでもやりたかったのは、自分に自信をつけたかったからだ。

大学3年生になった頃、埋没法で二重にした。
腫れる体質だったようで、思ったよりダウンタイムが長引き、変化に気づくタイプの女子はわかっていたと思う。それでも、劣等感に気づかれたくなくて、整形をしたとは誰にも話さなかった。

告白されても「綺麗」と言われても、かけられた呪いは解けない

鼻と目を整形しても、それでもサークル内で確立してしまった「ブス」というポジションからは降りることはなかった（実際卒業まで「ブス」と言っていたのは2人くらい）。

それでも、告白される回数は圧倒的に増え、知らないおばさんに「あなた綺麗ね」と声をかけられることもあった。
だけど、いくら外見を褒められても、100回「可愛い」と言われても、「ブス」と言われ続けられたことによって、かけられた呪いは解けない。まだ足りない、ずっとそう思っていた。

しかし、整形後、サークルに行くのをしばらくやめた私は、とてもとても気が楽になった。
「ブス」と言われた時の反応に困ることも、異性の、可愛い子に対しての対応の差に心を病むこともなくなった。

早くそうすればよかったと、今ではそう思う。サークルという客観的に見たら小さな枠内で、私は本当に苦しんでいた。

整形する前の写真を今、見返しても思う。可愛いよ、大丈夫ってあの時の私を抱きしめてあげたい。
夜な夜な美容外科のホームページで症例を見比べることも、上手くいかないアイプチに絶望して予定をキャンセルすることも、付き合った彼氏にすっぴんを見せられないでメイクしながら寝ることも、できれば経験したくなかった。自分が「ブス」だと気付きたくなかった。