突然ですが、質問です。ごみを減らし活かすリデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の“3R”の中で一番重要なRはどれでしょうか?
ほとんどの人が、リユースやリサイクルと答えるのだが、答えはリデュースである。
理由は、リユースやリサイクルをするのにも手間がかかったり、CO2(二酸化炭素)が排出されたりするので、そもそもごみの排出量を減らせば上記の手間が少なくなるからだ。
私が働く工場の「環境管理」は、社会貢献もできるいい仕事
文系卒にしては珍しく、私は工場で環境管理の仕事をしている。工場の環境管理とは、電気の知識を使って省エネを推進したり、化学の知識を使って公害を未然に防止するための施策を打ち立てて実行したり、包括的に環境周りのことをする職種である。
最初は聞きなれない専門用語にあたふたし、覚えようと努力しても理系科目の授業なんて大学で1秒も受けていない私にとっては、なじみがない単語ばかりでなかなか頭に入ってこなかった。
しかし、数年も働いていると嫌でも覚えられるようになり、この仕事の面白いところも、辛いところもある程度わかってきた。今では最近ホットな“環境分野”に、工場の視点から携われて、社会貢献もできるいい仕事してるじゃんなんて思ったりする。
多くの工場で環境管理担当者の頭を悩ませる課題の一つに、“廃棄物発生量の削減”がある。モノを作っている以上、廃棄物は必ず出るものなのだが、やはり排出量が多いとそれだけ処理費も多くかかってくるし、焼却処理をすればCO2が発生する。経費削減という意味でも、もちろん環境を守るという意味でも、重要な管理項目の一つなのだ。弊社でも、芯なしホッチキスの利用の推奨や過剰包装品調達の削減運動などをしているのだが、それでもなかなか減らない。
人の手間や思いが込もっているモノが「廃棄物」として処理されていく
廃棄物発生量が減らない理由の一つとして、不要なものを買いすぎていることが挙げられる。ある日、こんな社内電話がかかってきた。
従業員Aさん「咲良ちゃん、実は極秘裏に捨てたいものがあるんだけど、こっそり処理を手配してくれない?」
私「いいですけど…何を捨てるんですか?」
従業員Aさん「実はある機械部品を買ったんだけど、仕様が思っていたのとは違って使えないことが分かったんだ。新品で捨てるのはもったいないけど、他にどうしようもないし…上司に言ったら『なんで確認しなかったんだ』って怒られるからこっそり捨てたいんだ。頼むよ」
実物も見たのだが、それはそれは高そうな機械部品だった。言われるがままに処理を手配したのだが、なんだか心に引っかかるものがあった。
工場勤務の私の視点から言わせてもらうと、その機械部品もどこかの工場で作られたものである。最近は工場の自動化が進んでいるとはいえ、やはりある程度は人の手が加わっているもので、その機械部品には作った人の手間や思いが込もっているモノである。人が汗水たらして、交代勤務で身体がしんどい中、モノづくりのプライドをかけて必死に作ったものなのだ。それが役目を果たすことなく、ただの“廃棄物”としてCO2を排出しながら処理されていく…なんともやるせない気持ちになる。
環境問題をシンプルに考えたとき、大切なのは「リデュース」
しかし、考えてみてほしい。これは私たちの身の周りでも、一般家庭でも起こっている事なのだ。服を買ったが、サイズが合わずに捨てたことはないだろうか。買った食品を使いきれずに、賞味期限が過ぎてしまって捨てたことはないだろうか。旅行先でその場のノリで買ったキーホルダーを家に帰ってから、なんでこんなの買ったんだと思って、そのままゴミ箱に入れてないだろうか。
その服、その食品、そのキーホルダーは、工場や農家の方たちが心を込めて作ったものである。それが一度も使用されず、“ごみ”として焼却され、地球温暖化の原因の一つになっていると知ったら。そして、様々な地球温暖化の現象によって苦しんでいる人たちがこの事実を知ったら。私たちは、そのような人たちにや未来の子供たち、そして地球にどのような顔向けをすればいいのだろうか。
昨今、環境に関する新しい単語が続々と出てきている。エシカル消費、カーボン・フットプリント、SATOYAMAイニシアティブなど、もちろんそれらも重要なのだが、ここは一つシンプルに“リデュース”、つまり不要なものを買わないということに重きを置いてみてはどうだろうか。
「わたしの暮らしと地球と」に着目した、比較的取り組みやすいテーマであり、駆け出しの環境プロフェッショナルからの提案である。