「うわべだけ」のいい女に囲まれた3年間、私の心はすり減っていった

顔かたちが良く、スタイルもいい。従順で控えめながらも、話のトピックの守備範囲は広い。よく周囲に気を配り、他の人が嫌がることも進んで引き受け、嫌な顔を一つしない……。そんな“いい女”たちに囲まれて過ごした3年間、今振り返ってみると、私はうまく呼吸ができていなかった。息苦しかった。

私が新卒で入社した会社はいわゆる古風な日本企業だった。それなりに会社の規模も大きく、総合職と一般職、そしてその中でもしっかりと組織立っていた。私は一般職社員として、主に総合職のサポートをしたりしていたが、同じ一般職の社員の多くは、いわゆる“いい女”の人たちばかりだった。外見も中身もよいと思われていたが、その人たちの多くが「うわべだけ」のいい女だった。入社直後から切磋琢磨し、一緒に頑張ってきた同期たちにはあまり思わなかったが、他の人たちに関しては、そう思うことが多々あった。総合職社員や男性社員、先輩など、すなわち気に入られる必要がある存在の人の前では、“完璧ないい女”であるにもかかわらず、その人たちがいないところではうわさ話や陰口が止まらない……。そんな日々のウソや虚構を実際に自分で目にしたり、同期たちから聞いたりしていくうちに私の心はすり減っていった。

尊敬していた真の"いい女"な先輩の退職にぽっかりと開いた心の穴

しかし、そんな職場の中にも、一人、人間として尊敬できる人がいた。その方は私より3年前に新卒入社した方で、私にとってお姉さんのような存在だった。仕事もそつなくこなすタイプで、性格も裏表がなく、誰に対しても同じ態度で接していた。その方とは一時期同じ部署で働いていたこともあり、よく面倒を見てくれ、たまにランチや夜ごはんにも誘ってくれた。しかし、その方との関係も永遠には続かなかった。ある日、その方から「私、今度転職するんだ。この会社には、あと一ヶ月くらいしかいないんだ。」と告げられた。結婚や出産、育児を理由としたわけではなかったため、純粋な転職だった。最後にランチに連れていってもらったときに、「この会社もいいんだけど、なんか、このままじゃいけない気がして……」と、転職の理由をそれとなく聞いた私へ、先輩はそう答えてくれた。

その先輩が辞めた日の翌日、出勤して前日まで先輩が座っていた座席がきれいに片づけられているのを見た私は、よく映画や小説で見かける“心にぽっかりと穴が開いたような気持ち”がわかったような気がした。悲しみ、無力感、やりきれなさ、そんなことが入り混じった、言葉では表現できないような気持になった。私の最も身近にいた本当の“いい女”であった先輩がいなくなってしまったことに、その場ですぐに対処できなかったのだ。

環境に息苦しさを感じた時こそ忘れないでほしい、逃げるという選択肢

月日は過ぎ、私も会社を辞めることになった。辞めることはあまり多くの人に伝えていなかったため、発表したときは驚かれたが、退職の前日、思いがけないメールを受け取った。それは仕事を数回一緒にしたことがある方からのもので、文面は「うちの会社で、血の通ったメールや電話をくださる数少ない貴重な方が辞めると聞いて、非常にショックです。心の支えでした。」と書かれていた。私はそれまで、自分が会社の誰かの心の支えのような存在になれていたとは夢にも思っていなかったため、そのメールを読んだときにはびっくりした。しかし、そうやって素直にご自身の気持ちを伝えてくれたことに心が温かくなった。皮肉にも退職直前に、優しい方もいたんだと気づくことができた。でも、虚構やうわべの気遣いの中で過ごすのは、やっぱり息苦しかった。

退職して思うことは、もし自分が今いる環境に息苦しさを感じたら、逃げてもいいということだ。本当に追い詰められてしまうと、逃げるということを思いつくことすらできなくなる。だからこそ、その一歩手前で、逃げるという選択肢があることに気が付いてほしい。「自分で選んだ道だろう。逃げるなんて卑怯だ。」と他の人や内なる自分の声が聞こえてくるかもしれない。でも、何事も経験しないとわからないのだ。経験して、居心地の悪さを感じたら、自分に優しくなってほしい。