ややツリ目の一重まぶたに、落ち着いた低い声。突出した個性も、親しみやすいあだ名もない私は、「お堅い人」と誤解されやすい。そのため、新しいコミュニティに馴染むのに時間がかかる。心の中では、もっと気軽に仲良くなりたいと思っているのに。

本当は皆と仲良くしたいのに。自分に言い訳をし輪に入れない日々

大学3年生の春、初めて足を踏み入れた職場も例外ではなかった。
出社初日、アルバイトもろくにしてこなかった私は緊張で失神しそうだったが、学生インターンは数年単位で続けている者も多いらしい。長い時間と度重なる飲み会の賜物が、テンポの良いやりとりの節々からにじみ出ていた。彼らのテリトリーに無邪気に分け入る勇気などなく、入社から日が経っても、朝の挨拶と電話対応、お先に失礼します以外の言葉を発する機会はあまりなかった。

ホントのことを言えば、私も皆と仲良く働きたいのだ。冗談や相談を言い合える関係だったら、周囲に気を遣いがちな自分もどれだけ働きやすいだろうと思う。しかし、人見知りな上にワイワイ盛り上がるのが苦手だから、話しかけるのに「後輩の調子を知るための雑談」みたいな理由を探してしまう。2ヶ月後に入ってきた後輩がすっかり馴染んでいるのを見て、「別に仲良く『しなきゃいけない』わけじゃないし。」とまた言い訳をしてしまうのだった。

ずっと悩みのタネだったことがあっさりと解決した意外なタイミング

しかしこの問題は、意外なタイミングで解決することになる。
初めてのインターンから1年後、ある会社のメディアチームにライターとして参加した時のこと。チーム結成と同時に集められたメンバーは5人、出社義務はなく、やりとりは基本的にオンラインで行うらしい。私にはこの環境が天国のようだった。チーム発足から関われることも大事な要素であったが、それまでの悩みが嘘のように「仲良く」が容易く実現したのだ。

悩みのタネだった「働く環境」と「コミュニケーション」。環境に関しては、完全在宅のためもう心配はいらない。真面目に働く隣で繰り広げられる楽しげな会話、みたいな地獄絵図からは完全に開放された。そして、あれほど苦手意識を感じていたコミュニケーションも、月に数回のオンラインミーティングなら、コツを掴めば難しいことではなかった。例えば、日頃机を横断するように行われた雑談はアイスブレイク代わり、通信環境の確認も兼ねていたから、誰が言うでもなく一人ひとりに話す機会がまわってきた。白熱する議論に入るタイミングは難しいが、会議だもの、発言には意味があると言い聞かせれば勇気が出る。最後は、電話対応で鍛えたちょっと高め&張りめの声で挨拶をすれば完璧だ。

いろいろな私と手を取り合って、自分らしく生きていきたい

環境の変化により、私の悩みは一歩解消へ近づいた。特にチャットアプリでのやりとりは、メッセージ文化に慣れた私には非常に好環境だった。秒単位で行き交うメッセージのやりとりは、若者の主戦場。絵文字とスタンプを駆使して後輩感を演出したメッセージのなかで、あの頃ずっと知ってほしいと思っていた「ホントの自分」を出せたことが嬉しかった。

コロナ禍で変化した生活様式は、いつかもとに戻ってしまうかもしれない。それでも、素の自分を知ってほしい私と、人見知りを乗り越えられない私。どちらも置いてはいけないホントの私だから、手を取り合って生きていきたいと思うのだ。