ねえ、私ジャンヌ・ダルクになりたかった。
戦って仲間を守れる人間なりたかった。

だけど、私はそんな高尚な人間にはなれなかった。今だから笑えるけどね!
仲間を救えなかったとある出来事。

仲間が疲弊している様子を見ていたから、ただ私は救いたかった

当時所属していた部は、内勤と外勤のチームに分かれていた。内勤チームは平日勤務・10時~18時という勤務体制だったが、外勤チームの勤務体制は人によってバラバラ・土日出社あり・その上なかなか代休が取りづらいというような、ブラックに近いグレーな中働いていた。私は内勤。外勤チームが疲弊している様子を、胸を痛めながら見つめていた。

ただ、だんだんいてもたっても居られなくなってしまい、彼らを救うために何ができないかと画策し始めた。劣悪な環境を改善するために、効率化できるような資料を作ってみたり、疲れている仲間に声をかけたり、メンタル的に辛いという人のフォローができるようにメンタルヘルスマネジメントの資格を取ったり。弱っている仲間を励まし続けた。
「チームが違うんだからそこまでしなくても」という声もあったけど、同じ部の仲間が辛い思いをしていること自体がもう、許せなかった。

辛い状況を変えて彼らを救う、ジャンヌ・ダルクになりたかった。
だけど、結論からいうと、私はジャンヌ・ダルクになれなかった。

せっかく取ったメンタルヘルスの資格は、役に立たなかった

ある時、中途採用である男性が外勤チームに入ってきた。朗らかで少し不器用な、とても真面目な人。彼は今までとは全く違う仕事、慣れない環境、背中を見て学べという体育会系なノリ、先輩たちからの悪態、いろんな要因に苦しめられているようだった。だから私は、彼に話しかけ、話を聞き、困っていたら手助けし、できる限りのフォローをした…つもりだった。

その後、彼は入社して1年経たずして退職した。正確にいうと、精神を崩して、“辞めざるを得なくなった”。せっかく取ったメンタルヘルスの資格なんて、なんにも役に立たなかった。救えなかった。私の「救いたい」という思いは、泡沫に消えて、私はジャンヌ・ダルクになるのを諦めた。
私は、弱かったんだ。本当は“楽園”を作って、みんなが辛くない場所を作りたかった。

人を“救う”って、なんだろう。救う、掬う、巣食う。
普通の人間が誰かを救うだなんて、おこがましいよね。だけど、きっと誰かを救うことで、私が救われたかった。誰も傷つかない世界に、私が行きたかっただけ。

エゴだとわかっている。でも、私は救いたいし、救われたい

そう、私のエゴだってのも、実はもうわかってるよ。

エゴだとわかっていても、それでも私は救いたくて、救われたくて奔走する。みんなのジャンヌ・ダルクにはなれないけど、身近なあなたの力になれるはずだって、私は信じている。だってあの時声をかけ続けた何人かの仲間は、今でも私の側に居てくれているから。あの時の行動は、無駄ではなかったんだ。

「なつぺぃに話してよかった」「元気出た」「ありがとう」そう言われると「こちらこそありがとう!」という気持ちになる。その言葉で私は生きていける。私は私の身をもってして、大切なあなたの心を救いあげたい。そしてどうか、笑っていて!

ジャンヌ・ダルクになって世界を救うことはできないけど、私はあなたの力になりたい。

そう思いながら、今日も私は痛みで“優しさ”と“強さ”を磨き続けている。