「自分が思う恋愛の定義をグループで話し合ってみましょう」

そう教授に告げられた時、かなり戸惑った。
私は生まれてこのかた、"恋人"という存在を知らない。
中学から私立の女子校に通い始め、高校もそのままエスカレーター式。そして、大学受験に失敗し、女子大に入学した。卒業まで含めると計10年、男性がいない環境で過ごしてきた。現在二十歳。つまり、20年間恋人がいないのである。恋人どころか、最後に好きな人がいたのは小学生の時だ。小学生の好きはもはや恋とは呼べないかもしれないが…。

恋愛経験ゼロってそんなに珍しいこと?大学で知った世間の認識

"恋愛"という言葉を自分の辞書から抹消したかの様な人生を送ってきた私は、幼い頃からヲタク気質で、中高生時代は国民的アイドルグループのガチヲタだった。友人と一番盛り上がる話と言ったらヲタクトークで、その年代の女子が必ずするであろう恋話とはかけ離れていた。
恋バナがゼロのわけではないが、理想の男性像とか浅い話しかしていなかった。そこには理想像だけで、実体験など何一つなかった。クラスメイトも恋愛をしている人の方が少数派で、この環境に何の違和感も感じていなかったのである。

大学で出会った友人に"恋人がいたことがない"と軽く話すと、凄く驚かれ、「嘘でしょ??」という言葉を返された。今まで恋人がいたことがないことなんて、私の周りにはザラにあることで、驚いた反応をされるとは1mmも想像していなかった。その瞬間、世間では、私みたいな人は普通ではないのだと認識し恥ずかしさを覚えた。そんな自分が嫌だった。
この時まで恋愛経験がないことを全く気にしていなかったわけではないが、「まぁ別に良くない?いつかできるでしょ」というスタンスでいた。

友人との恋バナ、親友に初恋人。周りの変化に私の考えにも変化が

以上のエピソードの他にも、少しずつ私の考えが変えられる出来事が起こった。それは、中高時代の親友に"恋人"が出来たことだ。同士だと思っていた友人に"恋人"が出来てしまう、悲しみとも寂しさとも少し違うこの気持ち。勝手に同じスピードで進んでいると思っていたのに、立ち止まっていたのは私だけで、友人は何メートルも先に行ってしまっていた。

中高の友達と集まると、数年前には話題にも出なかった恋愛トークが始まる。私には場を盛り上げられる話も、キュンキュンする片思いエピソードすら持っていない。肩身が狭すぎる。「ゆななんてうちの大学にきたら一瞬で付き合えるよ」「モテモテだよ」そんな優しい言葉をかけてくれる友人達。それが続くのもいつまでだろうか。

別に、恋人なんていなくても私はとっても幸せだし、家族と友人がいればこれから先も楽しく過ごせる。「まだ人生何十年もあるし、いつかは私にも恋人ができるだろう。もし、将来結婚ができなかったとしても猫と犬と暮らそう。」そんな想像まで完璧にした。 

恋人がいてもいなくても、どちらの未来も私らしく楽しみたい

しかし、甘い妄想とは打って変わり、突然、本気で死ぬまで1人だったら…という焦りがやってくる。私はこのままで幸せなはずなのに、どうしても"恋愛をしたことがない"自分を認められない瞬間がある。恋愛が何かもわからないまま20年を過ごしてきてしまった私は人間として欠如しているのではないか、そんな不安が襲ってくる。
YouTuberさんのお悩み解決動画でも、恋人がいたことがないという悩みと共に、励ます言葉が添えられるシーンを目にする。口ではポジティブな言葉をかけてくれるその人も本当は私の様な人間を下に見ているのではないか。頭では、重く考えない方が良いと分かってはいても心は不安だ。どれ程外野からの言葉を聞いても自分が納得しなければ安心はできない。

この矛盾と葛藤は恋人ができたら終わるのだろうか。また新たな矛盾と葛藤が生まれるのだろうか。
恋人がいない私と恋人ができた未来の私。同じ私でも、良さは変わらず素直にその瞬間を楽しめていたらいいな。