誰かと比べられたくない、私は私の可愛いを守りたい。
時にはかっこよくだってなりたいし、綺麗にもなりたい。一番になりたい。
じゃあその「一番」は誰と競った結果なの?
比べられたくない、と啖呵を切る裏で
莫大な劣等感がこちらを覗いている。
私らしさより、人からの評価を求めた高校時代
「自分は自分」
「私は私になりたい」
ある韓国アイドルは歌う。
私は毎日その歌を聴きながら化粧をする。
丸顔にボルドーのリップ、
大きなじゃらじゃらピアス、
全身真っ黒のコーデ。
遡ること5年前
ふわふわしてるね、と言われた高校時代。
ある程度モテた。
人から言われた「可愛い」を必死に拾い集めていたから。
自分じゃなくなっていく感覚、
それでも「皆からの可愛い」が欲しかった。
「私の可愛い」よりも。
他人の「可愛い」から解かれたら、自分がわからなくなった。
学生という檻から抜け出した後は、
容姿について誰からの評価もない環境になった。
鬱と摂食障害で引きこもる毎日。
たったひとりで鏡とにらめっこ。
可愛いかわからなかった。
誰かのために容姿を気遣わなくなって、
他人からの「可愛い」に雁字搦めになっていた私は、いげその鎖が解かれた時、しばらくその場から動くことはできなかった。
過食でどんどん太る身体。
拒食症で苦しんだ高校時代の反動だ。
痩せていることが可愛くて、痩せていることに価値があると思っていた。
他人の評価を意識しないことは、「逃げ」ではない。
これ以上太りたくない、
醜くなりたくない。
そう蹲る一方で、
「あなたはあなたのままで」
という言葉から目を逸らせずにいられない。
これは逃げか?
楽な方へと逃げているだけなのか?
鏡を見つめながら自問を繰り返す。
自分の容姿に落ち込み、時に悔しさに苛まれながら求め続けたのは、とてもシンプルな答えだった。
「いや、そうじゃない」と。
私を受け入れること。
可愛いやかっこいいは私の感性で決められること。
世間の目を自分の評価基準にしないこと。
順番付けの危険性と、他人のそれに傷つく必要はないということ。
この気付きを「怠惰」や「逃げ」でまとめられるものか。
極めてとてもシンプルな、
それでいて1番難しい決心だった。
自己満足が自信になり、自信がおまもりになる
真っ黒のワンピース、
寒色系のアイシャドウ、
白いアイライン、
顔がよく見える流した前髪。
「なりたい」が私に飾られる時、
似合うか否かより、自己満足する気持ちが強い。
そしてそれがささやかな自信となって、
自信がおまもりとなった。
一歩家の外に出る。
ばったり会った高校の同級生、
その瞬間先程の自信が嘘のように萎んで、
顔を隠したくなる。
「なんか変わったね笑」
「前の方が似合うよ」
ほんの少しの言葉が胸に突き刺さる。
他人からの評価という雨に濡れて、
自分が溶けてなくなっていく。
そしてまた最初の一文へ巻き戻し。
「私の可愛いは私で守る」
「他人からの可愛いが欲しい」
2つの気持ちと共存し矛盾し戦う。
勝っては時に負けて、涙と共に濃いリップを拭いながら。
そんな日々を毎日、生きてゆく限り
これからも。