ゲイやレズビアンだと知れば、私も狙われる。最近、ゲイやレズビアンが増えた。そんな偏見を持っていないですか。
最近、やっと多様性として認められてきたLGBT(レズビアンやゲイなど性的マイノリティのこと、QIAが付く場合もある)。今までもずっと存在していたのに、認められ始めるとそういった人が増えたと勘違いする人が多いのだろう。
足立区議員の発言でもあったように、LGBTは伝染するウイルスのようなものだと勘違いしている人がいるのだろうか。学校などでは、ゲイやレズビアンだと知られると、俺も狙われると避ける人がいると聞く。しかし、あなたは異性すべてを性的な目で見たり、全員に恋心を抱くだろうか。異性愛者が、異性の中で誰か1人を好きになるように、同性愛者も特別な誰かを好きになる。LGBTへの理解がないまま偏見を持って彼らを非難、批判することだけはやめてほしい。
大学生、LGBT当事者と関わり、初めて過去の私を肯定できた
かくいう私も、LGBTに分類されるバイセクシャルだ。けれど、幼い頃からそうだったわけではなく、自認したのは20歳の頃だった。でも、今思い返すと中学生の頃すでに、女性の先輩へ恋心を抱いていたと思う。その頃は、“憧れの先輩”だと思っていた。
話すと緊張するのも、目が合うとドキドキするのも、笑いかけてもらえるとすごくすごく嬉しかったのも、尊敬する先輩だからだ、いい後輩だと思われたい、私は人見知りという性格もあるから…と様々なことを考えていた。そう自分に言い聞かせていたのかもしれない。なぜ同性の先輩にこんなに過剰に反応してしまうのか、自分の心が理解できなかった。
あの頃は、LGBTの知識なんて何ひとつ持っていなかった。
そんな私は大学で、初めてLGBT当事者と関わった。当事者というより、自己の性的志向をマイノリティだと自覚している友人というのだろうか、私は彼女と関わる中でLGBTを知り、関心を持った。そして、彼女に恋をした。
初めは、彼女の持っていたLGBTの知識を自分に投影してしまっているのだと思った。でも、好きの気持ちは増す一方だった。私はこの時、20歳で初めて、自分は、バイセクシャルなんだと気づけた。そう気づいた時、高校生の自分を思い出した。「ああ私、あのときも恋をしてたんだ。」LGBTを知ることで、初めて高校生の頃の自分を肯定できた。
すべての人が幸せになれるように、LGBTとはなにか発信してほしい
LGBTへの理解は、まだまだ広がってはいない。最近は少しずつメディアでも取り上げられるが、主に発信しているのは当事者だし、全国放送で取り上げられるのはLGBTへの差別発言ばかりだ。
それでは、LGBTは悪いもの、おかしなものだという誤認が広がってしまうかもしれない。すると、今まで世間の偏見と闘ってきた人たちの努力が無駄になってしまう。自身の性に悩んでいる人が自分を否定してしまう可能性や、批判されている議員のような発言が、日常的に横行してしまう可能性もでてくる。
現に、先日AbemaでLGBTの特集が組まれていたが、その中でパンセクシャル(男女に限らずすべての人が恋愛対象となる)の方の「好きになった人が好き」という発言を、恋人やパートナーがいても"他の好きになった人が好き"ということだと捉えられていて「不倫と同じじゃないか」と言われていた。「(性別に関わらず)好きになった(性別の)人が好き」という考えは、そこまで受け入れられないものなのか。これほど理解されていないのかと驚いた。
こういった誤解や偏見は、“無知”から始まるのだと思う。LGBTその一つ一つのマイノリティについて、理解がないままその人を理解しようとする。人にはそれぞれ個性があり、恋愛観もまた様々なのに。知識を飛ばして一人一人を理解しようとするから、さらに疑問が生まれ、さらなる誤解や偏見が生まれるのではないだろうか。だから、まずは「LGBTってなに?」という疑問から、発信すべきだと思う。LGBTへの関心やその知識が広がれば、私のように自分を肯定できたり、性自認がわからないなどの苦しみから救われたりする人もいる。
それに、当事者でなくともLGBTの知識を持っていれば、それらを知らずに悩んでいる友人に寄り添えるかもしれないのだから。今、この国はすべての人が幸せになれる国に向かって、変わろうとしている。その第一歩として、まずLGBTとはなにか、知ってもらうための情報を発信してほしい。
差別や偏見で傷つく人が減り、多様性が認められる社会になってほしい
確かに、LGBTへの関心が高まり認知されていくにつれ、私のように「自分はバイセクシャルなんだ」「俺ってトランスジェンダー(心と体の性が不一致の方)だったんだ」と、性自認が変わった人もいるかもしれない。だから、セクシャルマイノリティである人が、増えたと思われるのかもしれない。
でも、私や彼らは以前から、この国で生きていた。それに、冷静に考えてほしい。周りにゲイやレズビアンがいたとして、異性愛者が同性愛者に変わるだろうか。ニュースを見て、あなたは同性を恋愛対象として見ようと思ったか。私はバイセクシャルだけど、私の姉は男性が好きだし、弟には彼女がいる。LGBTは、伝染して増えるようなものじゃない。
ただ、今まで悩み苦しんでいた人が、自分を肯定できたということ。そして、愛し合う2人が一緒に、胸を張って過ごせるようになったということ。男らしさ・女らしさに捉われていた人が、自分らしさを取り戻したということだ。ただ、それだけの素敵なことだ。
この素晴らしい動きが、誤った認識で周知されていくことだけは避けたい。正しい知識としっかりした理解とともに差別や偏見で傷つく人が減り、すべての多様性が認められる社会になってほしい。LGBTへの知識がないまま、LGBへの理解がないたった1人の発言で、LGBTへ偏見をもつ人が増えないことを祈ります。