コロナ禍で気づいた食の重要性。イギリスの税制から得たヒント

コロナウイルスの感染拡大は止まらない。特に、私が暮らすイギリス(イングランド)では感染者数、死者数ともに膨大な人数となっており、事態の収束が見えない。
2020年3月に一度目のロックダウン(都市封鎖)が行われたが、ロックダウン緩和や飲食業支援キャンペーンを行ったり、冬になり気温が下がってきたりしたこともあり、感染が広がっている。
そして、11月5日からは、二度目の全国的なロックダウンが開始された。こちらのロックダウンは、4週間という期限が設けられているが、ニュースを見ていると、クリスマスや年明け、さらに来年の春まで続くのではないかという専門家の意見もある。
私が住む地域は、イギリスの中でも大都市ではないため、3月の一度目のロックダウンでも、今回の二度目のロックダウンでも、大きな混乱は少なかった。
しかし、一度目のロックダウンの際には、おそらく人々がコロナウイルスについて何も確かな情報がなく、ロックダウンというものも一体どうなるのか、といった不安があったからなのだろう、ロックダウン直前のスーパーでは普段見ないような光景が繰り広げられていた。
人がごった返し、トイレットペーパーや魚や豆の缶詰が並べられている棚が空っぽになっていた。幸い、数日後に再度同じスーパーを訪れた際には、在庫もあり、棚が空っぽになっている様子はほとんど見られなかった。
しかし、人々が家にいる時間が増えたからであろうか、小麦粉をはじめとする食材が品薄になっていたりした。
ロックダウンで、レストランやパブ、商業施設や図書館等の公的施設が次々と閉鎖される中で、食材を扱うスーパーが、“エッセンシャル(=生活に必要不可欠なもの)”として営業を続けていたことで、“食”というものがいかに大事であるか、人々の生活に、人々が生きるということに密接に関わっているかを痛感させられた。
そこで、日本はどうだろうかと考えてみた。日本に住む両親から話を聞くと、やはり3月や4月はスーパーから物がなくなったり品薄になっている状況があったという。
また、普段は落ち着いているスーパーでも、開店前から人々が並んでおり、開店と同時に人が店内に殺到したという光景も見たそうだ。もちろん、これが日本全国であるとは思わないが、国は違っても、非常時に食べものについて不安になるのは皆同じなのだと思う。
日本の食と税制について、私が現在暮らすイギリスの税制から何か得られるヒントはないか考えてみたい。
まず、イギリスでは日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)が1973年に導入された。導入時の税率は10%であったが、2011年には、保守党政権のもとで標準税率が20%へと引き上げられた。
消費税が20%と聞くと驚くかもしれないが、「ゼロ税率」と採用しており、非課税の適用範囲も広くなっている。また、適用範囲は狭いが、軽減税率も導入されている。ゼロ税率が適用されるのは、食料品、書籍、新聞、雑誌、子ども用衣料品など、日常生活に必要とされる幅広い品目だ。
ちなみに、付加価値税は内税のため、スーパー等において、価格は税込価格で表示されている。ただし、食料品といっても全ての食べものではなく、生活に必要不可欠ではないとみなされる以下のようなものには20%が課されている。それは、アルコール飲料、チョコレート、アイスクリーム、ジュース、ポテトチップス、キャンディ類である。
私が実際に生活している中で買うものについては、ゼロ税率のもので事足り、さらに健康な食事ができるため、このゼロ税率は良いアイデアだと思っている。
もちろん、イギリスの税制には、ゼロ税率の対象になる食料品の範囲の線引きが難しいことなどの問題点も指摘されている。また、イギリスで機能している税制をそのまま日本でも適用できるとは考えていない。
しかし、私が総理大臣になったら、このアイデアを何とかうまく活用したいと思っている。人々の命や生活に関わるものが安いということは、人々の命や生活を大切にしているということの証明であると思うからだ。
フードバンクの活用などともあわせて、生きるということに直結する”食”へのアクセスのハードルを低くしたいと考えている。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。