私がイギリスに移住してもうすぐ一年が経とうとしている。そのうちの約半年を予想もしなかったコロナウイルスに覆われてしまったため、経験できたことは少なかったかもしれない。それでも、私が実際に経験し、見聞きした範囲のことしかわからないが、イギリスのいいところや、反対に日本の方がいいなと思うところ、この一年でいろいろと感じることがあった。
イギリスでは身近なチャリティショップ
いいなと思ったことのひとつに、生活の身近なところにあるチャリティ文化が挙げられる。まず、その代表が、イギリス全土に1万1200軒以上あると言われているチャリティショップ(中古品を販売している)の存在だ。
チャリティショップは、市民から寄付されたものを販売し、その売り上げを寄付に充てている。実際に、私も先日引っ越しをしたのだが、その際、引っ越し先の間取りに合わないサイズのダイニングテーブルをチャリティショップに寄付した。寄付の方法はとても簡単で、持ち運べる小さなサイズのものであれば店に持ち込めば快く引き取ってくれる。私が寄付したダイニングテーブルは大きかったため、回収にきてもらうことにした。その際も、近くにあるチャリティショップに電話をして、日時を相談し、あとは取りに来てもらうのを待つだけで済んだ。寄付をする側に手間がかからず、簡単でシンプルであることがいいなと感じた。
実はその寄付をしたダイニングテーブルも、もともと夫がチャリティショップから購入したものであった。中古品と言ってもまだ使えるもので品質がよく、それを低価格で購入できるのはとてもよい仕組みだと思った。寄付したダイニングテーブルが、この先どんな人の手に渡っていくのかを想像するのも楽しい。
衣服の回収も、気軽に利用できる
また、不要になった衣服の回収もしばしば行われている。衣服の回収袋はチャリティ団体が各家庭にポスティングする。そして、もし家庭内に着なくなった服があれば、その袋に入れ、期日に家の外に置いておくだけでチャリティ団体が引き取りに来てくれる。これも、寄付する側の手間がなく、また強制でもないため、気軽にできる点がよいと思った。
また、私がよく行くスーパーでは、レジを出たところにフードバンクの回収ボックスがある。買ったすぐあとに食品を入れる人がいるのかはわからないが(実際に私は入れている人を見たことはない)、箱が置いてあるだけでも、人々の意識には変化が起きるのかもしれない。また、その店の外には、チャリティ団体の不要になった衣料品の回収ボックスもある。これは、郵便ポストよりも大きいくらいのサイズで、存在感があり人々の目に留まりやすい。
寄付する側にとっての手間が少ないことが日本との違い
このように、生活の様々な場面でチャリティが身近な存在としてある。移住して一年足らずのため、まだまだ知らないことや取り組みも多いだろうが、それでも、概してそれらの手軽さ、参加のしやすさを感じている。
そして、寄付する側にとっての手間が少ないことが日本との違いであるようにも感じた。
私が日本にいたとき、実際に要らなくなった本や衣料品をNGO・NPOに寄付しようとしたことがあるが、指定された住所まで送る必要があるものがほとんどだった。また、その際の梱包資材を準備する必要があったり、送料を負担しなければならないものが多かったりと、その手間の多さにやる気をなくしてしまった。
また、少なくとも私が住んでいた地域では、衣服の回収は行われておらず、資源ごみの日に大量に捨てられているのをしばしば見かけた。
寄付やチャリティは「見返りなどを求めず、良いと思って」やることが前提であろう。しかし、寄付までのハードルが高ければ、多くの人は参加を諦めてしまうのではないだろうか。人々が参加しやすいチャリティのヒントを、これからもイギリスの生活から学んでいきたい。