私の髪の毛はちょっと特殊な癖っ毛で、外側はそれなりにまっすぐ、でも内側はもしゃもしゃでボリュームがひどい。

Google先生が教えてくれた、私の毛髪人生を変えた美容室

高校生の頃、人生で一度くらいはショートカットにしてみたいと、勇気を出してショートボブにした。けれど数日経たないうちに髪は3倍のボリュームに変わり果て、美容師さんには「縮毛強制しないとちょっと…」と苦笑いされる始末。わかってはいたけど、髪質という生まれ持ったものは変えられないことを思い知らされ、さすがに凹んだ。こけし人形の毛量を5倍くらいに増やした髪型はお世辞でも可愛いとも似合っているとも言えなくて、大人しく縮毛強制をし、なんとかボリュームを落とした。その後はショートやボブを諦め、パーマをゆるくかけたセミロングに落ち着いた。

大学入学を機に地元から上京し、私は美容室難民になった。元々美容室が苦手なこともあって(なぜなら当時自己肯定感が低すぎて、「私なんかの髪を切る美容師さんが可哀想」と本気で思っていた)、色んな美容室に行き、やめ、行き、を繰り返した。安住の地(美容室)を求め一年半近く彷徨った私は、色々面倒くさくなり、東京なんだから(東京に対する謎の期待)、人と話すことやそもそも美容室が苦手な自分でも行ける美容室(?)くらいあるだろう!と開き直った。「人見知り 美容室 東京」「話さない 美容室 東京」「髪を切らせるのが申し訳ない 美容室 東京」など、とにかく美容室と東京と苦手要素を掛け合わせ、Google先生に聞いた。最後に関してはさすがにGoogle先生も困惑していたが、それでも嫌な顔一つせずになんと当時のバイト先(原宿)から激近のよさげな美容室を教えてくれた。そして、誇張と思われるかもしれないが、その美容室(師)がわたしの毛髪人生を変えた。

見るからにチャラそうなお兄さん。言われるがまま、お願いすると

Googleに聞いた時は青山とか原宿とかの高めでオシャンな(完全に田舎出身者の勝手なイメージ)とこでもなんなら良いしもうどこでも行ったるわ!と思っていたが、いざ綺麗でお洒落な外観を前にして本当に後悔したし、自分はここにいるべきではない(?)と思って泣きそうだった。でもテンション高めの自分が勝手に予約しちゃったので、狼を前にした子羊のような震えをいなしつつ入店した。

担当してくれたのは30代くらいの柄シャツを着たお兄さんで、へらへらした感じで見るからにチャラそうだった。見た目で判断するのは良くないと思いつつも、少し怖かった。こういう見た目の人がすすきのでめっちゃ風俗のスカウトしてるの見たことあるし、新宿で酔い潰れて道路上睡眠かましてるの見たことあるし、道頓堀で川にダイブしてるの見たことある。と思ったら、とんでもなく丁寧に、物腰柔らかにカウンセリングをし、私の髪質と頭の形を淡々と(良い悪いではなく、本当にただの特徴として説明してくれた)説明し、それに合わせて切るね、と綺麗な手つきでカットの準備を始めた。

この時私は「ショートに憧れていた話」をしてないし、今のセミロングを整えてもらいたい、とだけお願いしていた。しかし、お兄さんはカットの直前に軽い口調のまま「ね、首が長いし顔が小さいから、ショート絶対似合うと思うんだよね。ショートにしない?」と提案をしてきた。びっくりして、私は反射的に「でも縮毛矯正しないと髪質的にボリュームで無理だと思います、過去に失敗した経験あるし…」と否定した。
お兄さんは「確かに頭の形と髪質があるからちょっと工夫が必要なんだけど、絶対似合うよ!もし特にこだわりないなら、やってみない?」とへにゃっとした笑顔で言った。私はとりあえずのセミロングより、お兄さんの言うショートに惹かれ、じゃあ、お願いします。と頼んでいた。

不安が全部吹っ飛んだ。さらっと新しい魅力に気付かせてくれた

どんどん長かった髪の毛が切られていく。どきどきと不安と期待が入り混じる。お兄さんは途中途中私の髪質に合ったケア方法や、乾かすときのコツをこまめに教えてくれた。出来上がりを見て、さっきまでの不安は全部吹っ飛んだ。形の綺麗さと、軽さ、初めて見る自分の整ったショートカットに、髪の毛そのものの作りが変わってしまったのかと驚いた。お兄さんは当たり前のように「やっぱりショートめっちゃ似合うね!後頭部の形でボリュームが出やすいから、さっき言ったやり方で乾かしてね。あんまり髪いじるの得意じゃないって聞いたから、乾かしたらそれだけでキマる形にしたから!」と笑顔で私を送り出した。軽い口調と明るいノリで喋りながら、さらっと新しい魅力に気付かせてくれた。お兄さんは「チャラくて怖い美容師」から、とにかく軽くておどけている「ひょうきんな美容師」かつ私にとっての「魔法使い」に変わった。

自分の髪でも素敵なショートカットになれるんだ。そのことに、ずっと気付けなかった。髪質は変わらない。でもあの美容室で魔法にかかった。今も、私はお兄さんにショートカットを維持してもらっている。魔法使いに出会ってもう二年半。髪を切ってもらうたびに、毛先は軽くなる。それからずっと、私の心も軽やかだ。