遅くまで残業をして、ベッドに倒れ込むように眠り、翌朝鏡をきちんとみることもなく急いで会社に向かう。いつもなら綺麗に巻いていく髪も、簡単に後ろでくくるだけ。
身なりに気を使う余裕がないほど、歯車のように働く毎日を続けていると、自分の価値を見失いそうになる。
そんな時、私は美容院を予約するようにしている。
非日常の旅へと誘ってくれる美容院という空間
美容院は、日常に寄り添いながら、非日常を叶えてくれる場所だ。美容師さんと話すことといえば仕事や恋愛など些細な日常会話だし、髪色や髪型も少しメンテナンスをするだけで大きく変えることはめったにない。
しかし、美容院に足を踏み入れるだけで、混沌とした日常から離れ、まるで遠くへ旅をしているかのような気分になれる。
シャンプーをしてもらう時間は、私にとって唯一心を無にできるひとときだ。高級なホテルにいるかのような香りと心地良い水の音に包まれながら、暖かいお湯で頭を洗われる。
その瞬間、どんな不安も焦りもスッと水の中に解けゆくように見えなくなって、ただただ脳をリラックスさせることができる。
家でシャワーを浴びている時は、どうしても考え事をしてしまうけれど、いつもとは違う場所で他人に頭を洗ってもらうという非日常が、脳を休ませることを可能にしてくれるのかも知れない。
手鏡越しに見る美しい自分の姿は、私に自信を与えてくれる
私が一番好きなのは、ブローが終わって手鏡を使いながら自分の後ろ姿を見る瞬間だ。
普段の自分とは違う香りを纏い、トリートメントで驚くほどサラサラになった髪に指を通しながら、普段は見ることのできない自分の後ろ姿をみる。照明に当たって輝く髪は、見違えるように美しい。
そんな自分の姿を鏡越しに見る時、私は本来の自分を取り戻したような、それでいて新しい自分に生まれ変わったような、そんな感覚になる。
私は美しくて価値ある存在であることを再認識するとともに、より大きなことを成し遂げられる未知の自分を垣間見たような気持ちになるのだ。
身なりを整えることは自分を大切にすることと同じ
私にとって身なりを整えることは、自分を大切にすることと同義だ。
メイクも落とさずに寝てしまったり、服装も髪も適当に決めて外出したり、お菓子ばかりの乱れた食生活をしている時は決まって、ストレスを言い訳にして自分を後回しにしている。
そんな自分が嫌いで、鏡に映る疲れた顔の自分を見る度に落ち込む。
そして、余裕のない毎日を続けてるうちに、自分は本当に価値のない人間で、どうでもいいと思うようになってくる。
美容院は、そんな私に自分の価値を思い出させてくれる場所だ。
美しく整えられた髪は、美しくいることがどれだけ私にとって大切なことで、自信を与えてくれるのかを教えてくれる。
最近、また仕事が忙しくなってきたので、早速美容院に予約を入れようと思う。