結婚。それって女の幸せとイコールではないんだから、そんなに気にしなくっても良いんだよという説。老後の事とか考えると、妥協してでもしといた方が無難だよという説。その他、有象無象の説が、私の同世代独身女性の周りを渦巻いている。

旦那が薦めた漫画。すぐ、「あ、これ私の好きなやつだわ」と分かった

それらの中のどの説か正しいのか、そもそも正しい説がその中にあるのか、私には分からない。だけど、とりあえずはその暴風の圏外に出て、基本的には凪いだ(時には荒れ果てた)結婚生活を送る29歳主婦の私が、「結婚してよかった」と感じた瞬間について、大したエピソードではないけれど、ここでこっそりお話ししたい。それは私の旦那が、私のささやかな「好き」を理解してくれた時の話だ。

先日から旦那はコミックサイトにハマっているのだが、そこで何やら面白い推理漫画を見つけたと言う。「『ミステリと言う勿れ』っていう漫画、すごい面白いよ。いくらちゃん、これ好きそう」。それを聞いた時、私はすぐにはその漫画を調べもせず、そして読みもせず、「え~ホントに?課金しちゃだめだからね(笑)」と軽く流して、相手にしなかった(ヒドい)。

ところが後日、私がインスタをボーッと流し見していた時。なんとなく目についたコミックサイトの無料立ち読み広告から、私は自力で『ミステリと言う勿れ』に辿り着いてしまったのだ。これは面白そうだと思い、さっそく無料立ち読みしてみる。1話目の冒頭部分を読んだだけで「あ、これ私の好きなやつだわ」と分かった。

私は一通り、その漫画の無料分を読み終わって大満足した。あ~、やっぱり面白かった。そしてその後、作者さんの名前を確認して、ついに気が付いた。「あ、これ旦那がこないだ薦めてくれたヤツじゃん」、と(やっぱりヒドい)。

私はすぐに(やっと)、職場にいる旦那に「こないだ教えてくれたミステリーの漫画、無料サイトで読んだわ。めっちゃ面白かったよ」とLINEを飛ばした。すると少し経ってから、旦那から返信が。「やろ?でも本屋さんには中々無くてさ~Amazonで買おうよ!」「うん、いいね!」

結婚してから6年経つ。旦那は徐々に、私の好みを把握しつつある

そんな訳で現在、我が家の本棚の共有スペースには、『ミステリと言う勿れ』が全巻並んでいる(オススメです)。

そういえば、先日旦那とドラマを見ていた時。私が「これ面白いわ~」と平たい感想を言うと、彼は「確かに、いくらちゃんこれ好きそう。登場人物多めで、それぞれのストーリーがリンクする展開、好みだよね」と答えて、にっこり笑ったのだった。

結婚してから6年経った私達夫婦。旦那は徐々に、私の好みを把握しつつある。

では現在私は、旦那の好みを把握できているだろうか?多分、そこそこできていると思う。彼の好みはシンプルだ。単純で分かりやすい。

好きな色は赤。大好物はお肉だが、子供が好きな料理も大抵好き。音楽は明るいアップテンポの曲、小説はハートフルなハッピーエンドを好む。彼の好みは基本的に明るくキラキラしたものばかりで、私とは真逆だ(私は暗くてウツウツとしたものが好き)。

お互いの好みを知り、影響を与え合う人がいるのは、結構幸せかも

とはいえ2人が共に暮らす中で、旦那がそのキラキラとした好みの枠から離れた物を「好き」と言う場面を目撃する事も、たまにはある(前述の漫画もそうだった)。私はそんな時、とても面白い気分になる。「へぇ、こんなのも好きなのね」と。

他人からは好みがハッキリしている様に見える人でも、時にはその好みの枠を越えて何かが刺さることがある。また、その好みの枠組みも、時を経て変化するものなのだと、妻として旦那の側にいる私は気付く。恐らく私も彼の好みに影響を与えているだろうし、与えられてもいるだろう。

誕生日やクリスマスなど、旦那のために改まってプレゼントを選ぶ時には、何にしようかと迷うこともある。しかし、「日常の中でお互いの好みを知り合って、影響を与え合う様な関係の人が、人生の中で1人でもいるということは、結構幸せなことなのかも」と、私はお店でプレゼントのラッピングを待ちながら思ったりもする。

結婚について、今の世の中には様々な価値観がある。そんな中で、私は「結婚してよかった」と思っている。

しかしもしも、既婚者ではない誰かが、自分の「好き」は自分だけが知っていれば十分だと感じているのであれば、その人には「無理に結婚する事はないよ」と言いたい。1人で追い求めたい「好き」がある人も、世の中には沢山いる。その道を選んだ先に見える景色は、きっと掛け替えのないものだ。

でももしも別の誰かが、日常の中でささやかな「好き」を受け止め合える相手がいてもいいかも?と思うのであれば、その人には「結婚してみてもいいんじゃない?」と、私は言いたい。その選択をした先に見える、穏やかな(時に荒れ果てた)景色も、きっと掛け替えのないものだから。

取り急ぎ私もこれからは、旦那の「これ好きそう」をもっと大切に受け止めるようにします(謝罪)。