バタバタと家を出て、電車に乗り込むいつもの朝。一息ついてスマホを開くと、お母さんからのLINEが届いていた。

『今日も雪かきです』

一緒に送られてきた写真には、雪が駐車場一面に積もっている。
慣れないスマホを使って家の前から撮ったんだろう。
そんなお母さんの姿を思い浮かべると、なんだか微笑ましかった。

独り暮らしは時に寂しくなる。そんな私にとっての細やかな楽しみは

雪のない東京の12月。
東北出身の私は、冬の訪れをきちんと感じることもなく、年末まで走り抜けようとしている。
毎日朝9時に家を出て、夜の9時過ぎに帰宅する日々は、9 to 5とはいかなくとも、念願かなってデザイナーとして働き充実していた。
それでも独り暮らしをしていれば時に寂しくなるもので、家族連れや仲良く歩く同世代の子達を見ては、自分の家族や地元の友達を思い出す。

そんな私にとって細やかな楽しみとなっているのが、定期的に届く母の近況報告のLINEだった。
一緒に暮らしている二匹の猫の写真をメインに、『今日はこんな様子だったよ』、『ずっと膝から動きません笑』と短く送られてくる。
動画の撮り方を聞いてくるお母さんを思えば、一生懸命打ってくれたことは簡単に想像がついた。

時間、思いやり、見えないものすべてが私の心を温かくさせた

温かさを宿すのは、言葉だけではないらしい。
考えてくれた時間、かけてくれた時間、思いやり、見えないものすべてが私の心を温かくさせた。
仕事や忙しさに追われた日々なぶん、お母さんからのLINEは突然贈り物が届いたようで私の心をスキップさせる。
最近では『ふるさと納税しようと思います。返礼品、何がいいか選んでね。』とLINEがきた。
私が『もち米にする~』と送ると、了解の文字と3つの絵文字。

笑顔マーク、パンダ、黒猫。

余談になるが、うちの猫は一匹が白黒ちゃんでもう一匹が黒ちゃん。
お母さんいわく、これは自分と猫二匹の意味らしい。
可愛さと、くすっと笑えるくすぐったさが散りばめられた、お母さんの言葉の定期便に、わたしの独り暮らしは癒されている。

一年会わないのは初めて。LINEや電話で思いを馳せる日々

2020年は簡単には帰省するにもいかない状況で、東北はなおさら。
お母さんと一年会わないというの初めてのことで、LINEや電話をしながらに思いを馳せる日々が続いている。
昔見たCMで印象深い言葉があって、今の自分の心境をそのまま体言しているようで、最近思い出された。

『会えない時間は、会っている時間より、人を思っている。』

この言葉の美しさに、初めは惹き付けられたけれど、今はこの言葉の前向きさに救われている。
会えない日々は、大切な人を想いやる時間になる。
そして普段なら見逃しがちな、もしくは感じなかった小さな心のスキップに、私たちは出会うことができるのだ。

もうすぐ年末。一年の感謝と来年の抱負を込めて、今度は私からお母さんに笑顔になってもらえるような言葉を送ろうと思っている。