私は言語能力だけで生きているといっていいほど、動くセンスが磨かれないまま育ってしまったようだ。
運動、車の運転、ボート漕ぎ、キャンプなどどれも動くことに関しての才能とセンスが必要だ。世間一般ではこれらを卒なくこなしている人が多いと思うけれど、私のような人種は素直に「凄い」と思うだろう。

合格できない教習所の実地試験に、自分の動作への違和感を覚えた

小学生の時の50m走の記録は普通よりも少し遅いくらいで、自分がそこまで動作が苦手だとは自覚していなかった。中高は通常とは違う生活を送っていた(不登校、通信制高校)ので他人と体力を競い合う機会はなかった。
そんな私が「あれ?」と思ったのは自動車免許を取得する為に教習所へ入所した時だった。
学科試験は難なく合格するも、実地試験がうまくいかない。
自分の足なのにブレーキとアクセルの踏む感覚がうまくわからない。S字カーブは何度もやり直しの上、毎回手に汗が滲んで止まらない動悸。パニック状態に等しかった。ハンドブレーキも操作が難しく感じられ、1ヶ月経った頃には退所を決めた。
両親に出してもらったお金は、儚い泡のように消えてしまった。本当に申し訳ないと心から思うけど、出来ない事はいくらやっても無理だった。

発達障害を疑い検査を受けた結果、境界知能と診断された

その後、発達障害を疑ってIQ検査を受けた。結果、タイトルの通り境界知能(発達障害グレーゾーン)と診断が出た。境界知能とは知的障害とまではいかないが健常者というわけでもない、曖昧な、そしてグレーな位置付けだ。35人のクラスに約5人いるとされている。
私の場合動作性IQがかなり低く、言語性IQは普通かそれ以上。その差がとても大きい為、総合的なIQは標準値に届かなかった。
この数値は千差万別で、反対に動作性IQは高くても言語性IQが低い人もいる。
「ケーキの切れない非行少年たち」という本がある。この本は現在漫画化されていて、話題を呼んでいるという。検索してみると当事者として(非行はしたことがないしケーキも切れるけど)、同じ境界知能としてはかなり興味深い内容だ。
非行をするような少年には元々発達障害や軽度の知的障害があって、それは本人がどうにかできる事ではないので適切な支援が要る、という話らしい。
思い返すと、小中学校の頃に何人か乱暴で有名な子がいた記憶がある。きっとこれを読まれている方の中にもそういう同級生の存在が頭の片隅に残っている人もいるはずだ。
乱暴な子は、実は認知機能の弱さという要因があって一般的に良しとされない行為に及んでしまうという。
まだ読んでいないしネタバレのようになってしまうので、これ以上本の内容について触れるのは終わることにする。

誰もが生きやすい環境づくりと、認識がより深まりますように

私はさわりだけでもなかなかの衝撃を感じた。
じゃあヤンキーやワルもそういうことになるのだろうか?なんて短絡的なことを一瞬考えてしまったが、実際のところはどうだろうか。小さい時にもし乱暴な境界知能の子に何かされたとしても、それを「あの子は境界知能かもしれない」とすぐ疑える親はかなり少ないと思う。
だからこそ、この曖昧な存在をより多くの人に知ってほしいと思いこの記事を書いた。
もちろん境界知能には危害を加えない人々の方が多いだろう。悪いことをするのは一握りの人間なので「境界知能=非行」というような極端なマイナスイメージで知られてしまうのは御免だ。
ただ非行少年も自分で自分がよく分からない、分からないことすら自覚できていない状態なのだろうから、適切な対策をしてくれる施設や何かが今以上にもっと増えたらいいなと思う。

当事者の誰もが生きやすい環境づくりが大事だ。
「IQが低い」からといって馬鹿にするのは早計。
グレーな人々についての認識がより深まる事を願っている。