『結婚していないと異端者扱いされる』ような環境にいる人は、今どれくらいいるだろうか。私は結婚＝幸せとは思っていないから、世間が総じて『結婚するのが当たり前』と思っていることが、寧ろ奇妙なことのように思えている。

一般人が大好きな『恋愛』というものにすら、全く興味が持てない

昔の私は、結婚することが『普通』だと思っていた。けれど次第に、華の女子高生、女子大生と呼ばれる存在になっても、一般人が大好きな『恋愛』というものにすら、全く興味が持てないということに気がついた。

年を経れば勝手に恋愛感情が芽生えると思っていたけれど、未だに私には恋愛感情というものがない。つい最近、30歳を過ぎた兄が、結婚相談所で出会った同い年の女性と結婚して、持ち家もあり順風満帆。今年子どもも生まれるらしいと聞いて、あまり感慨が持てない自分がいた。強いて言うならば、兄は共働きで二人とも在宅ワーク、住む家に困ることもなく向こうの家族ともうまくやっている。そんな経済的にも社会的にも自立した生活を送れている兄に対する、羨望や嫉妬があるということだ。

私にとって結婚というのは、気の進まない忘年会や同窓会のように、やりたい人がやればいいことだった。けれど結婚により得られる利益は、思っていた以上に沢山あるように思う。もし子どもを産めば、出産や育児で何かとお金がかかるが、私の兄夫婦のように経済力や思慮深さがあれば、どうとでもなるように思う。

私もできることならば、兄夫婦のようになりたかった。いや、両親のように居心地の良い家庭を築いて、幸せな結婚生活というものを送ってみたかった。結婚していないからといって、その人の性格や経済力に問題があるからだと思われるような世界は、何とも居心地が悪いのだ。

恋愛観や結婚観の違いに苦しんでいる人は、LGBTだけじゃない

悪気なく振った恋愛話が、人を傷つけるかもしれないと察せられる人間は、この世にどれほどいるだろう。LGBTだけではなく、恋愛観や結婚観の違いに苦しんでいる人がいることを理解してくれている人は、どれくらいいるだろう。

「彼氏いないの？紹介しようか？」
「結婚しないとこの先苦労するよ」
「孤独死するかもよ」
すべて、余計なお世話だ。それは自分が一番わかっているし、この先年を取ったらこういう話題を余計に降られるようになるのだろうかと思うと、反吐が出る。

けれどこんな恋愛に全く興味がない私とて、恋バナで盛り上がる同性が羨ましくないと言ったら、嘘になる。できることなら砂を吐くような甘い『恋愛』とやらをしてみたかったとも思う。

普通恋愛するよ、普通結婚するよと言われても、できるわけがない

ただ、『ない』ものを出せるだろうか？　それはないものねだりではないか？
私にとって、「結婚をして幸せになれ」と言われることは、手に持っていないものを出せと言われているのと同じだ。ない袖は振れないのと同じように、できないものはできないのだ。
普通恋愛するよ、普通結婚するよと言われても、そもそも恋愛感情すらない私に、できるわけがない。今まで普通に男性とも話をしていたし、一緒に食事をしたこともあるけれど、一度も恋愛感情なんて持ったことがなかった。それでいいではないか。そもそも『ない』というのが、私にとっての普通なのだから。

『普通彼氏くらいいるでしょう？』『恋愛経験ないの？嘘でしょう！？』なんて、私の知ったことではない。
だからもしあなたが『彼氏がいない』『結婚できない』ことで悩んでいるのだったら、「大丈夫だよ」と伝えたい。
けれど今の私の生活は不安定で、実家に頼り切っている。そんな姿を見ても安心なんてできないだろう。だからまずは私自身が、仕事も私生活も充実させて、世界中の人たちに自慢できるくらい、誰からも否定されないような人間になろう。
そして同じように悩んでいる人たちに、心から「大丈夫だよ」と伝えられるような、格好良い大人に、私はなりたいのだ。