「あ~早く結婚したい」
「早く子供が欲しい」

アラサーにもなれば、よく聞くセリフだ。私の感覚はと言うと、少し違う。そもそも「結婚したい?」や「子供欲しい?」という質問自体に違和感を感じている。もちろん長年付き合っているカップルに対して聞くなら分かるのだけど。

「結婚したい?」って聞かれて感じる、憧れの対象の違い

結婚って、したいとかじゃなくて、「この人となら結婚したい」と思った時にしたいかどうか分かるもんじゃないの?子供も、「この人との子供なら欲しい」と思った時に欲しいと思うもんじゃないの?というのが私の考えで、そういう相手がいない時でさえ、結婚したいと思う感情が私には分からない。

なので、この質問をあびる度に、なんじゃそりゃ?と思ってしまうのだ。
でもこれはきっと、憧れの対象が違うだけであって、どちらが理想的だとか正しいとかそう言うことを言いたいんじゃない。

私にとっては結婚は手段 結婚式を挙げるより、原っぱで星空を眺めたい

例えば、ただただ結婚がしたいと思っている人は、「結婚すること」自体に憧れを抱いていて、もしかしたら結婚相手は少しくらい妥協出来るのかもしれない。私の場合は、「結婚」という行為よりも「相手と素敵な関係を築くこと」を大事にしていて、「結婚」自体に対する憧れはあまりないように感じる。結婚式を挙げるか、原っぱに寝ころんで星空を鑑賞するか、どっちか選ぶならどっち?と聞かれれば、迷わず後者を選ぶ。

そもそも「結婚」という形については必ずしも必要ではないと思っている。
私はもともとクルーズ船員で、色んな国の人達と触れ合ってきたり色んな文化を見てきたりしたので、紙一枚の契約上である「結婚」という形は無意味なように思うのだ。お互いに心から信頼し合っていれば、紙切れ一枚の契約に固執することなくお互いの人生を尊重し合って生きていくことが出来ると思うし、むしろ契約に縛られていないからこそ、のびのび且つ相手を思いやる気持ちに溢れたカップルを沢山見てきた。

外国に移住するために籍を入れておいた方が良かったり、生きる上でどうしても必要になった時の手段として「結婚」という契約関係が成り立つくらいで良いのではないかと思うのだ。もっともっと事実婚が当たり前の時代になったら良いと思っている。

「我が子を愛しているからこそ産みたくない」親友の答えが新しかった

そして、「子供が欲しいか?」の問いについては地元の親友2人と語り合ったことがある。一人目の答えはごく一般的で
「今はまだ自分のことでいっぱいいっぱいで、育てられる気がしないからいらない。いずれ欲しいかも。」といった、おそらく多くの若者が持っているであろう模範解答だ。

もうひとりはと言うと…?

「私は自分の子供を愛しすぎているの。まだいないけど。だから、こんな辛いことばかりが起きるこの世界に自分の愛する子供を産み落としたくない!」

なにそれ!!新しい!!もっと聞かせて!!

「生きてるとさぁ、そりゃ楽しいこともあるけど、辛いことばっかりじゃん。本当にどんだけ辛いこと乗り越えたらいいのってくらい生きるのって大変じゃん。私は既に生まれてきてしまったから、楽しく生きられるように頑張るしかないけど、わざわざ自分の子供にそんな辛い経験をさせたくないの、愛しすぎているから。まだいないけど、笑」

なるほど。

人は、自分が子供を好きか嫌いか、自分が子育てをしたいかしたくないか、のあくまでも自分基準で子供を作るかどうかを決めているものだと思っていたので、彼女の考え方は私にとってはとても新しくて新鮮だった。

これだけ自分の(未来の)子供のことを考えられる人が増えたら、母や子に優しい社会になるんだろうなぁ~とか思いながら、見慣れた街中に、優しい香りをぷんぷん漂わす新しいパン屋さんを見つけた時のような、好奇心がざわめくような新鮮な気持ちになった。

いろんな選択肢と価値観 何が正解というわけではないけれど

後日、「こんな考えの友達がいて~」と、これまた感性豊かな他の知人にこのエピソードをお話してみると、「それ、分かるかも」と感慨深げに語り始めた。
「分かると言うか、少し違うかもしれないけど、この世界には親のいない子供たちが沢山溢れているじゃない。だから、わざわざ新たに子供を産み落とすくらいだったら、その子達を引き取りたいかもと私は思う。」

これには私も似た考えを持っていたので、とっても共感出来た。
親に「早く結婚して孫を見せてよ」と言われる度に「子供はいらない」と言い続けて来たのだが(まだ欲しいと思わないので)その度に「早く産まないと産めなくなるよ」と言われて来た。

が、私は「産めなくなった時にどうしても子供が欲しくなったら、養子を迎えれば良い」と思っている派なのである。

「かと言って、こんな考えの人が増え続けたら、少子化問題は深刻になっていくね。」とお互いに微笑みながらも、話が終わってもなお感慨深げな表情のまましばらくは沈黙の時間が流れた。
もう少し歳を重ねれば、「どうしようもなく誰かと一緒にいたいから早く結婚したい」とか「そろそろ自分の子供を育てたい」とか思うのかもしれないし、一生変わらず今の価値観のままかもしれない。

先のことは分からないけれど、こうして毎日を生きて色んな人と話していると、本当に色々な考え方を持った人がいるんだなぁ。正解なんてどこにもないよなぁ。と感じられることが面白い、と思うのです。