「アラフォーでお金があるのにまだ結婚していない人はだいたいコミュ障。売れ残っている人は何かしら難があるから」

聞きたくもない会話が耳に飛び込んできて、私の心を静かに傷つけた。

結婚していないというだけで、どうしてこうも肩身の狭い思いをしなくてはならないのだろうか?

「結婚することが一人前」という世界はとても生きづらい

まともな大人なら結婚して当然、と考える人はまだまだ少なくない。そういう人たちにとって、いい歳になって結婚していない人は理解に苦しむ存在だから、理由を勝手に探されて、時には人格まで否定される。
他人の欠点を想像する力があるのなら、結婚しない人のバックグラウンドにもう少し思いを馳せてみてほしいと思う。

例えば、世の中には好きな相手と結婚する権利を与えられていない人がいる。

日本では、同性婚が認められていない。
100年以上も前に決められたルールのせいで、大切なパートナーが命に関わる局面を迎えているときに、そばにいることが叶わなかったりする。

複数の相手と恋愛関係を結びたい人もいる。
関係する人がみな合意していれば、周りにとやかく言われる必要はないのに、自制心がないだのと批判されてしまう。

私はこのどちらにも当てはまらないけれど、「結婚することが一人前」と捉えられている世界はとても生きづらい。

私が結婚できない理由を、世間は勝手に見つけてくる

私のセクシュアリティは、デミロマンティック/デミセクシュアルという、感情的なつながりのある人にのみ惹かれる恋愛・性的指向。時間をかけて相手のことを深く知ってからでないと恋をすることはないし、そもそも人を好きになること自体が少ない。

1年前にこのセクシュアリティを知るまでは、自分はただの異性愛者だと思っていたし、自分に恋人ができないのは、外見の魅力がなかったり、内向的で出会いが少なかったりするせいだと、ずっと自分を責めていた。
「30代女性の婚活は厳しい」という噂に惑わされ、マッチングアプリに登録したが、結局誰のことも好きになれず、私はどこかおかしいのではないかと落ち込んだこともあった。

デミロマンティック/デミセクシュアルを自認してから、無理に焦って恋愛する必要はないと少しずつ自分を認められるようになってきたけど、「結婚しないの?」という質問には未だになんて返したらいいのかわからない。

結婚したくないわけではない。でも、努力して相手を見つけようとは思わない。

ただそれだけのことなのに、こんなに理解してもらうのが難しいなんて。

世間は私のことを枠の中に収めようと必死で、私が結婚できない理由を頼んでもいないのに勝手に見つけてくる。かつての自分がそうだったように。

同性婚が認められる素敵な社会に変わったとしても、「同性でも結婚できるのにあなたはどうしてしないの?」と言われる最悪な未来が私には見えてしまう。

結婚の有無なんかで、人の価値は決まらない

結婚は、好きな人と一緒にいるための手段に過ぎないはずなのに、どうしてそれ以上の付加価値を見い出そうとするのだろうか?
何歳までに結婚してないと遅れをとっているとか周りの人が判断する資格はないし、必ずこなさないといけないライフイベントでもない。みんながみんな結婚したいと思っているなんて大間違いだ。

結婚の有無なんかで、人の価値は決まらない。

結婚のことを気にしながら生きる人生なんてつまらないから、何が幸せかは自分で決められる人間になりたいと思う。
そして、いろいろな生き方を尊重できる人が世の中にもっと増えることを願っている。

「売れ残っている人」なんて、この世に一人もいないと思うから。