子供の頃に両親が離婚。
夫婦になるということも、結婚ということもよく分からないまま大人になり(寧ろ、否定的な見方をしてた)、特に強い結婚願望はなかった。

と、自分では思っていたけれど、22歳頃から段々と周りの友達も結婚を意識し始めて、早い子では23歳くらいで立派な結婚式をしてる子もチラホラ。

結婚は、「あなたは幸せなんだね」と認めてもらうツールでしかなかった

この頃くらいから結婚への憧れが出てきて、元々、結婚願望もそんなになく、結婚式への憧れも大してなかったのに、
結婚するならこういう式をあげたい!
こういうプロポーズをされたい!
こういう婚約指輪をもらって、こういう結婚指輪が欲しい!
旦那さんのお給料はこれくらいでマイホームも欲しい!
子供は可愛い顔の子がいいなぁ。
などなど…、理想が吹き出した。

でも、今思えば私の結婚の理想は全て外形的なものや、物質的なものばかり。

その当時は気付いてなかったけど、私にとって結婚とは、周りから「あなたは幸せなんだね」って認めてもらうための一つのツールでしかなかった。

当時の私は、自分の心が感じる幸せよりも、「周りから幸せそうに見られるか」の方が大事で、自分がそんな考え方を持っていることにも気づかないほど、周りからの幸せ評価を得るのに必死だった。結婚して、この人と幸せな日々を暮らしたいとか、穏やかな感情を味わいたいとか、2人で協力し合って生きていきたいとか、微塵も思っていなかった。「私が幸せになるために必要なこと」くらいの認識だったんだろう。

「結婚して扶養に入れてもらってパートで働こう」と安直に考えて

だから当時付き合っていた彼と、どうしても結婚したい!というわけではなかったけど、25歳の時に新卒から働いていた職場で、我慢の限界がきて辞めることに。休みが少なく、拘束時間も長く、精神的疲労も強かったため、辞める頃には次また正社員で働く気力が全く残っていなかった。

でも、もう今の職場を続けていく気力もない。そんな時に浮かんだのが「結婚して扶養に入れてもらってパートで働こう」という安直な考えだった。今思えば安直だとわかるけど、当時は必死だったのだ。

保育士になるために自力で数箇所から奨学金を借りて通ったため、就職した頃には月5万の奨学金の支払いがあった。結婚する頃には月3万に減っていたが、一括返済のために貯金は全くない状態。父は亡くなっており、母親には金銭的に頼れない。その頃のわたしには当時の彼と結婚することが一筋の光だった。

快く彼は承諾してくれたが、お金の管理が全くできない人だった。結婚前に両親にお金を借りていたようだし(結婚してから知った)、貯金もない上に「なんとかなるだろう」と威勢だけはいい。

そんな2人の結婚生活が豊かに進んでいくわけがなかった。お互い「何とかなるだろう」とふわふわ考えていて、結婚してすぐにお金が回らなくなった。夫の両親にお金を借りて、何とかなったが、「これからずっとこんな不安定な生活が続くのか」と考えるとゾッとした。

でももうフルタイムで働きたくない。そんな葛藤の中、ふっと閃いたのが、学生時代働いていた風俗の世界へ戻ること。それも夫に内緒で。夫と話し合うことも、誰かに助けてもらうことも当時のわたしはできなかった。パートで働きながら、風俗でも働いて、家計を支えた。

でも、ふと「こんなコソコソした生活いつまで続けるんだろう」と絶望する瞬間が何度もあった。夫とは戸籍上夫婦になっていたが、精神的な意味合いでは全く夫婦になれていなかった。お互い隠し事ばかりで、本音を伝え合っていなかった。おままごとの恋愛がそのまま形だけ夫婦になったようなものだった。私はいつもイライラして夫に当たり散らしていた。

そんな時に夫がただでさえ少ないお給料を、私にごまかしてボーナスの時に10万円抜いて使っていたことが判明。そこで一気に2人の関係に亀裂が入った。「私はこんなに頑張ってるのに、どうしてこいつはそんな酷い仕打ちができるんだ…」と怒りでおかしくなるかと思った。

始まった葛藤の日々。本音に従ったら、答えはいつも簡単に出てきた

こいつがこんなに好きにやるなら、私だって好きに生きよう。もう我慢するのはやめよう。
自分に素直になろう。そんなことを心に誓った直後に出会ったのが今の夫だ。

出会った瞬間に何の根拠もないけど、心の奥底、体の深いところから、「この人は大丈夫」という感覚のような言葉のようなものが湧き出て私を包み込む。ものすごく懐かしいような感覚で、心の底から安心感を抱いた。

その日、またねと別れた瞬間に、「あ、私この人と結婚するかも」と何故か思った。これがいわゆる、ビビッとくるというやつなんだなと後から分かった。

その日から次会うまでは4ヶ月空いたが、その間全く連絡は取り合わなかったが、4ヶ月後に会えるかもしれないと楽しみにしていたのは今でもうっすら覚えている。

そして、4ヶ月後デートをして、その時に初めて既婚者であることを伝える。

彼はとても驚いていて、このまま関係が終わってしまいそうだったが、その日「もう帰る?」と聞いてくる彼に対して、「まだ一緒にいたい」と答えた私。その後、2人きりの空間で、「本音を言うなら今すぐ旦那さんと別れて俺と結婚してほしい」と言われて、そこから葛藤の日々が始まる。でも、自分の本音に従ったら、答えはいつも簡単に出てきた。

そこからは行動が速かった。彼に結婚をしてほしいと言われた1週間後には、当時の夫に好きな人ができたことを伝え、夫からは「好きな人ができることはいいことだし、否定しない。ただ、どっちかにするかを3ヶ月以内に決めてほしい」と言われ、罪悪感に押しつぶされて生きた心地がしなかったが、1ヶ月後には今の夫を選ぶと前の夫に伝え、その1ヶ月後には離婚。そしてその3ヶ月後には今の夫と再婚。それが1年半ほど前の話。

今の夫と結婚してからは、何度も夫と本音でぶつかった。

分かってほしいことが分かってもらえなくて泣いたり、強い口調で責められて泣いたり。
イライラすることも今でもたくさんあるけど、それ以上に穏やかな感情を感じることが増えた。

「あ、夫婦ってこういうことなんだ」
「支え合うってこういうことなんだ」
って。

やっと人間らしい感情が揃っていった感覚を味わった。自分優先だった私が、自分も優先しつつ、夫のことも尊重できる方法を探ったり。誰にも頼れなかった私が、不安なことがあるとまず夫に相談するようになったり。そんな当たり前のことができなかった私から、そんな当たり前のことが当たり前にできるようになった私。

自分を縛るのではなく、自分にいつだって選ばせてあげられるのが大事

結婚とは何か?と聞かれたら、今でもスパッと答えられないけど、それが結婚なのではないだろうか。結婚なんて、その人によって捉え方も違うし、結婚生活も夫婦の形も夫婦の数だけ存在する。結婚をしてより幸せを感じられる人もいれば、1度目の結婚のときの私みたいに結婚しても幸せを感じられない人もいる。比べるものじゃないし、正解なんてない。

自分たちで2人の正解を作っていく。2人で正解にしていく。そして、失敗してもいいものだと私は思う。夫のことは大好きだし、どちらかの命が絶えるまで一緒にいたいとは思うけど、未来をコントロールすることはできない。もしかしたら、夫とも離婚を選ぶ時が来るかもしれない。

でも、私は思う。絶対に離婚しちゃいけないと自分を縛るのではなく、「本当にあなたがしたいならば結婚し続けてもいいし、離婚してもいいんだよ」と自分にいつだって選ばせてあげられる私でいることが大事。

そのために今は扶養内でパートとして働いているが、いつでも自分に選択させてあげられるように、今離婚を考えていなくても、夫が大好きでも、自分一人生きていくくらいは十分なくらいは稼げるようになりたいと思っているし、焦らず少しずつだが、そのための行動も起こしている。今結婚していたいから結婚してる。ただそれだけの単純なこと。単純なことなんだけど、ただ一緒にいたいと思える人が私の世界に今存在しているということが、ものすごく豊かでありがたいことだなぁと思っている。

結婚をしていようがしてまいが、今幸せを感じることも、豊かさを感じることもできる。今の私の密かな楽しみは、17歳年上の夫が私よりも先に逝ってしまったあとに、一人暮らしを楽しむことである。