“結婚はゴールではない”というけれど、それでさえ未婚の私にとってはどんなに走っても見えてこない景色なのだ。一昨年10月から交際している彼氏と呼べる存在はいるものの、33歳大学院生、卒業の見込み:ナシである。

「専業主婦にはさせない」と宣言された

 特別熱心に専業主婦を希望しているわけでもなく、仕事に大きな不満があるわけではないが、社会人生活がもう5年目ともなると主婦に憧れてみたりもする。上司の機嫌を伺う必要がなく、たいして仲良くもない同僚と女子会をする機会がない生活を、一度はしてみたいと思うことがある。しかし、そんな夢をやんわりと彼に伝えてみたところ「専業主婦にはさせない」と宣言されてしまった。家で好きに遊ばせるわけにはいかない、とも。

 人並に、ではあるが家事もできる自信はある。一人暮らしの経験もあり、今彼と暮らしている賃貸アパートだって散らかっているわけではない。たしかに、平日に生じたマイナスの帳尻を合わせるかのように、週末にまとめて洗濯や掃除をする生活ではあるが、そんなサイクルも悪くないと思っている。専業主婦になったら“帳尻”は毎日リセットすることができるし、彼だってもっと快適に暮らすことができるはずなのに。結婚するならダブルインカムでありたいという信念を彼は持っているようだ。毎日、朝6時に起きてメイクをして出社し、午後にはどろどろになったメイクに厚塗りを重ねて、疲れた顔で退社する生活を65歳まで続ける必要があるようなのだ。

結婚したら、私の「生涯に渡っての労働」は約束されてしまう

 彼は忙しい大学院生でありながら、毎日の食事と私のお弁当作りを担当してくれている。彼も18歳から一人暮らしをしたり、当時の彼女と同棲をしたりを経て、私といま一緒に暮らしている。彼との家事分担や経済的な負担割合について不満はない。しかし、一度彼と結婚してしまっては、私の「生涯に渡っての労働」は約束されてしまうのだ。会社を辞める選択肢が残されている今と、労働が条件の結婚生活、その点だけを見れば圧倒的に魅力的なのは前者のように思えてくる。それをも上回る幸せがあるのかもしれないが、未婚の私には知る由もない。

 「家に入る」という言葉を嫌う彼が妻を専業主婦にさせたくない理由には、社会との繋がりを絶ってほしくないという考えがある。これまでそれなりに社会人を全うしてきた私もその考え方については賛成できる。しかし、専業主婦は全員、社会との繋がりを断っているだろうか。社会のために直接的に生きる旦那や子どもを支えることは、引いては間接的に社会との繋がりを持って生きることにはならないのだろうか。私は、十二分になり得ると思っている。決して、遊んでいるわけでもないのだから。

私には今見えている世界が全てで、精一杯なのだ

 同じような条件ではないかもしれないが、家庭か仕事かといった同じようなニュアンスの悩みを抱えている女性は多いように思える。結婚願望だけでなく、夫婦となった後の生活に対する双方のイメージが合致しないと結婚には至らないのかもしれない。しかし、私ももう27歳、時間はないのだ。その気がないなら、早めに教えて欲しいし、その気があっても、それも早めに教えて欲しいのだ。安心するために。

 将来の私は、27歳の分際で未来の旦那様を決めるのに奔走している私を滑稽だと思うかもしれない。しかし、私には今見えている世界が全てで、精一杯なのだ。この中で、最善だと思う結果を考えて私の意志で行動できたら、将来の私もうなずいてくれるのではないだろうか。