私には、15歳年上の彼氏がいる。彼とはもうすぐ結婚する予定だ。

出会いは私が大学院生のとき。研究室の先生の手伝いで学生の授業に参加していたのだが、その授業に彼がいた。
彼は、「最初の授業のときに、私と目があった。」と主張するのだが、私にそんな記憶はない。授業がなくなった後に彼からアタックされ始めるが、私は彼のことを変なおじさんだと思って拒絶していた。

付き合ってすぐ、「結婚式は家族婚でもいい?」と聞かれた

しかしあるとき、共通の友人の計らいで鍋パーティーをすることになった。彼とまともに話すのはそのときが初めてで、きちんと向き合ってみると彼の素敵な人間性に気が付いた。
その後、彼との距離が縮まるのは早かった。当時の私は、「年の離れた人と付き合うのは楽しいかもしれない。」という軽い気持ちの一方、「この人と結婚するのだろうな。」という予感もあった。
不安もあったが好奇心の方が強かった。覚悟を決めて、付き合い始めた。

付き合ってすぐ、「結婚式は家族婚でもいい?」と聞かれた。それはさすがに気が早くないか。お互いの両親にまだ挨拶もしていないのに。と内心とても驚いたが、私は「いいよ。」と答えていた。彼も、結婚を意識していたのかもしれない。そのとき彼は39歳。すぐに結婚しても良いお年頃だが、私たちにはそうしない理由があった。
彼は、社会人として働いていたが医者になりたくて会社を辞め、3浪までして医学部に入った。授業料や生活費を両親に頭を下げて協力してもらっていた。私も、両親からの仕送りで勉強し、生活している大学院生。この状況で、年齢を理由に今すぐ結婚ということにはならない。
彼の言葉で「やっぱりそうか。」と予感が確信に変わったが、何かが大きく変わることはなかった。

雨の夜、小さな子猫を保護。交代で子猫の世話をした

だが半年後、ある出来事が起こる。雨が降る夜、彼の家に遊びに行くと、「外で子猫の鳴き声がする。」と彼が言う。2人で見に行くと、足元もおぼつかない小さな子猫が1匹で鳴いている。
どうしよう。このままでは雨に濡れて凍えてしまう。でも、母猫が迎えにくるかもしれない。子猫を段ボールに入れ、軒下に置いておくことにした。

次の日の朝、そっと見に行くと子猫はまだいた。衰弱しているのか近づいても鳴かない。「このまま放っておいたら、この子は死んでしまうのではないか。」そう思うと気が気でならず、子猫を保護してしまった。
最初は一時的な保護のつもりだった。しかし里親が見つからないので、2人交代で子猫の世話をした。子猫の世話を想像以上に手がかかった。学校の休憩時間に帰ってきて、数時間置きにミルクをあげた。彼は、夜中のミルクやりを率先して行ってくれた。

そのうち、2人とも子猫に愛情が湧いてきて、離れたくなくなってしまった。大家さんに内緒で半年間飼い続けた。そして半年後、私が就職のため、猫を連れてペット可の家に引っ越した。

「結婚」は何か特別なことではなくて、今までの延長線だと思う

遠距離恋愛中の2年間、一緒に育てた猫は私たちを繋いでくれた。電話での話題に困ったら猫のこと。2人とも我が子同然の猫のことが大好きで、聞かず、言わずにはいられない。私の実家の結婚挨拶のときも、彼が肝心の言葉が言えずにいると、それまで静かにしていた猫が「ニャーオ」と鳴いて、みんなで笑った。

私は彼と付き合い始めたとき、家族みたいな存在だと思った。だけど、猫が来て一緒に初めてのことに奮闘する中で、私たちはもっと家族になれたと思う。
そして、猫のおかげで実家の家族とも繋がれて、家族の和が広がった。

だから、私にとって「結婚」は何か特別なことではなくて、今までの延長線だと思っている。もし新しい家族が増えても、私たちの関係は変わることはないと思うし、変わったらそれはそれで楽しそうだ。これから先もどうぞよろしく。