「子供作らないの?」東京から地方の田舎に帰ると、近所や親戚、久しぶりに会う友人にも必ず聞かれる定番の質問。いい加減、耳にタコができそうだ。
「まだ考えてないよ。」とお得意の作り笑顔で答える。

現在29歳、私には占いの記事を執筆したいという夢がある。3年間自分探しの迷路を彷徨い、昨年やっと脱出した。

新卒入社した会社を半年で辞めた私は、人見知り克服のために飛び込み営業をする会社に転職した。本当は事務職に憧れる。定時で帰りたいし、雨の日も夏の日も外で仕事したくはない。
当時の私にとって「働く」とは、自分の苦手を克服していくことだった。

「行ってきます。」朝10時に朝礼を終え、ジャケットを羽織り、履きなれたペッタンこの靴を履き、繁華街にある職場から自分が担当するお客様の元へ急ぎ足で向かう。
今から訪問するお客様は、羨ましいくらいくっきりとした二重まぶたの男性オーナー。日焼けした肌とダボダボのTシャツ、ジーパン姿がとても似合う、見るからに陽気で話しやすい人。

私が本当に好きなことってなんだろう。と考えるようになったのは、このお客様との何気ない会話がきっかけだった。

「好きなことを見つけた方がいい」お客様から言われた忘れられない一言

店内で打ち合わせが終わり、資料をバッグに入れ、おもてなし用で出してもらったコップの水を全て飲み干ほそうと1口、2口と飲んでいた。すると「そういえば趣味とかあるの?好きなこととかさ。」お客様が話しかけてきた。
「ええっと。最近は仕事ばっかりで。趣味とか考えたことなかったです。」と私は答えた。
毎日家に帰るのは23時過ぎ。休日は事務処理をするため会社に行っていたので、趣味なんて考えたこともなかった。そうだ、今期のドラマは1話も見ていない。
「仕事も大事だけど、好きなこと見つけて今絶対した方がよいよ。」
ハッとして頭が一時停止した。なんだかズシッと重みのある言葉に聞こえた。このお客様から言われた一言を私はずっと忘れられなかった。

そういえば、好きなことってなんだっけ。
ずっと引っかかりながら約1年後、私は結婚を機に正社員を辞めた。念願だった全国1位も、希望部署への異動も叶った。なのに、何か物足りなかった。ここから私は、好きなこととは何かを本格的に考えることにした。

自己投資50万。本棚を整理するうちに気付いた、好きなこと

派遣社員、アルバイト、興味があると思ったことは雇用形態関係なく、仕事として挑戦した。気になるワークショップがあればとことん参加した。自己投資にかけたお金は50万を超え、それでもまだ好きなことが見つからない。

料理教室に参加した次の日、リビングの床やソファの端に置いていたテキストを本棚に整理していた。お金に関する本、好きな芸能人の写真集、自己啓発本と種類ごとに並べていく。揃えて気づいたのは、占いの本がやたらと多いということ。タロットカード、九星気学、四柱推命。10冊は超えていた。
こんなに占いの本を買っていただなんて気づきもしなかった。思えば、占い鑑定に行くのが大好きだ。まるでディズニーランドに行く当日の朝くらいにドキドキする。それがたまらない。

「この前の休み、あの有名な〇〇の占いの予約がやっととれてさ。」なんて職場で女子同士盛り上がるのが大好きだった。正社員を辞め、収入は3分の1。占い鑑定に行くのはお金かかるから自分で調べちゃえ。と思って集めた占いの本がたくさん増えていったのだ。

占いは信じる信じない、好き嫌いがはっきり分かれる。占いって怪しいよね。というマイナスイメージは非常に強い。
だから、私は占いを仕事にしたいなんて全く思わなかったし、そもそも宇宙と交信できる様な霊感がないとできない職業だ。と決めつけていたので、自分の大好きなことを見ないふりをしていた。

私は好きなことを追求するために働きたい。後悔したくない

このままでいいのかな。28歳12月末、クリスマスが終わったらもう来年だ。お風呂上がり、暖房がついたリビングで食べるアイスは最高だ。いつものようにソファに寝転がり、テレビを見ていた。
すると大好きな占い師特集の番組が放送されていた。「あ、占い師特集だ!」引き込まれるように画面を見る。テレビに出ていた占い師の女性は、霊感は無いが、占いが大好きで自分も占い鑑定するようになったと話していた。
私も占いが大好きだ。こんなにマイナスイメージの強い占いを、堂々とテレビで好きと言っている女性を見て本当に嬉しかった。誇らしくなった。

その日以降、私は本格的に占いの勉強を始めた。
現在は、バイトでライターをしながら、職場の同僚を占ったり、友人を占っている。「ありがとう。」この一言がすごく嬉しい。
占いなんて興味無いと言っていた現実主義な男性社員ですら、社内ミーティングの前に投資時期、転職時期などを聞いてくるようにもなった。
最近テレビで占いの番組が放送されているが、このまま占い市場が大きくなったら、「占いって面白いよね!」そう言ってくれる人が増えると思うと今からワクワクしてしまう。
そしたら、大好きな占いの会話をできる友人を増やすことができるからだ。

私が大好きな占いを学び、占いの情報を追求していくことで「占いを教えて!」と思ってくれる人に情報を提供することができる。それって、私もみんなも楽しくなれることだと思う。
ディズニーランドに行く時のワクワク、ドキドキを私もたくさんの人に届けて生きたい。そして私は今、占いの記事を書くチャンスがきたのだ。
まだまだそれだけでは食べていけないし、明日にでも終わりと言われるかもしれない不安定な道だ。でも人生1度きり。私は今を後悔しない。私が働く理由は、好きを追求することだ。